第30話 二日酔いの朝
「と、まぁ。こんなことがあったんですよ」
「なるほどな。んで、その流れから?」
「はい。狂ったように飲み出した感じですね」
話を聞く限りじゃ、まぁ色々あったのは分かるけど、だからってあんなになるまで飲むか、普通?
いや、音葉に普通を求めるのはあれか。
「それにしても、その
「まぁそうですね……彼女も音葉に負けず劣らずクセが強い子ですから」
「でも、すごい子なんだよ」
「そうなのか?」
「うん。音葉とはまた違ったタイプの天才だね」
「ほーん」
そうか、音葉って天才なんだな。
音楽の知識は全くないから、天才かどうかなんて全然分からないんだよな。だけど、実際に音楽やってる人が言うんだったら間違いないか。
にしても、音葉とは違ったタイプの天才ってどんなのなんだろう?
「あは、あんまり分かってないって顔だね」
「すまん」
「いいよいいよ。うーん、そうだねぇ。すんごく分かりやすく例えると、音葉は感覚で何でも出来ちゃうタイプの天才で、胡桃は努力した分だけ伸びるタイプの天才だね」
あー、な〜るほどね。
うん、確かに言われてみると音葉ってそんな感じするわ。
「これはほんの好奇心なんだけどさ、音葉と長谷川さんって、どっちの方が上手いの?」
「それは難しい質問ですね……」
「うん。すっごく難しいね……」
「え? そんなに?」
「そうだね。今の質問を分かりやすく例えるなら、ゴ〇ータとベ〇ットのどっちが強いか? って聞いてるようなもんだよ」
「なるほど。ごめん、俺が悪かったわ」
「分かってくれてよかったよ」
そりゃそうか。2人とも天才らしいもんな。そう簡単に優劣なんて付けられないか。
因みに俺はゴ〇ータ派だったりする。一応、Zの方な。異論はめんどくさいから受け付けんぞ。
「そうだ。話は戻るんだけど、その対バンってのは、どうやって決着が着くんだ?」
「今回はあっちのルールに合わせる感じですから、お互い交互に3曲演奏して2本取った方の勝ちですね。どっちが勝ちかはお客さんの反応次第です。まぁ、ラップバトルみたいな感じですかね」
「なるほどな。ん? ってことは、アウェーでやるAGEの方が不利なんじゃないか?」
「そんな事ないですよ。お客さんは正直ですからね。本当にいいと思った方に歓声をあげますよ」
なるほどな。それだったら、フェアに戦えそうだな。
「あ、そうだ。
「あーどうだろうな」
誘えば来たいって言うだろうけど、来れるかどうかは微妙なところだな。
まぁ、誘わなかったらほぼ100で拗ねるだろうから、声だけはかけとくか。
「まぁ、一応聞くだけ聞いとくよ」
「うん。よろしくね」
連絡は……明日でいいか。もう遅い時間だしな。
「さて、私達はそろそろ帰るよ」
「送って行こうか?」
「ううん。栞菜も居るし大丈夫だよ」
「そっか」
「それじゃ、音葉のことよろしくね」
「夜遅くにすいません。お邪魔しました」
「気にしなくていいよ。2人の方こそ、音葉のことありがとな」
「まぁ、慣れっこだからね」
「そうですね」
はは、そりゃそうか。
「それじゃあね」
「また」
「あいよ。気をつけてね」
さてと、んじゃ俺もそろそろ寝っかな。
「ん?」
「にゃあ〜」
「どった? ホームズ」
「にゃにゃっ、にゃあ〜」
このやたら、甘えた声で足に纏わり付いてくる仕草は、飯をねだって来る時にやるやつだな。
「腹減ったのか?」
「にゃ!」
「ったく、しゃあねぇな。猫缶しかないから、それでいいか?」
「にゃー! にゃー!」
「てめぇ、チュールも付けろってか?」
「うにゃ!」
「こんにゃろ。はぁ……わーったよ」
「にゃにゃん!」
ち……調子のいい猫だなぁ。いったい誰に似たんだか。まぁいいや。俺も若干腹減ったし、軽く夜食でも食ってから寝るかな。
――――
――
「お、おはよぉ……」
「おう。おはよ」
朝の10時をちょっと過ぎた辺りで、音葉がひっどい顔をして起きてきた。ありゃ完全に二日酔いだな。
「あ、頭痛い……気持ち悪い……」
「自業自得だな」
「あ、アラタくぅん〜。何とかしてよ〜」
「残念ながらすぐには治らないのが、二日酔いなんだよねぇ。我慢してくれ」
「そ、そんなぁ……」
ちょっと可哀想だけど、これを機に酒の飲み方を見直すべきだな。といっても、音葉は基本的には酒は強い方だから、こうなること事態珍しいことなんだけどね。
「ほら、とりあえず梅がゆとシジミ汁作ったから、これでも食って寝とけよ。どうしても辛いんだったら、頭痛薬もあるから飲んどきな。後、水分補給な。スポドリ買っといたから」
「あ、ありがとう〜。私は今、アラタ君が神に見えるよ」
「そうかそうか。なら、しっかりと崇めるがいいさ」
「ははぁー! っう……頭痛ァ……」
やれやれ……
「アラタ君は今日は学校?」
「いや、まで明後日休みだよ」
「ほうほう。どこかに出かける予定は?」
「寒いからないね」
「じゃあ、今日は私の看病でもしてもらおうかなぁ」
「え、やだよ」
「なんで!? っう……頭痛い……」
「いや、普通にめんどくさいし。それにゲームしたいんだよ。ほら最近、龍が〇く7外伝が出たじゃん? だから、それをやる前に7やっとこうと思ってさ」
一応、6まではずっとやってたんだけど、7のゲームシステムが受け入れられなくて、やってなかったんだよなぁ。でも、ストーリーはいいって聞いてたから気にはなっていたんだよね。
ただやっぱり、踏ん切りがつかないでいたから、今のタイミングが結構丁度よかったりする。
「それ、私も見たいかも」
「別にいいけど、音葉って龍が〇く知ってたのか?」
「そりゃ知ってるよ。6までは自分でやってたしね」
「お、んじゃ俺と一緒だな」
「やっぱり、アラタ君も7をやらなかった理由はあれ?」
「まぁね。てか、だいたいの人はそうなんじゃないかな。まぁ知らんけど」
「だよねぇ。私も知らんけど」
「「……」」
「ははは」
「にひひ」
「んじゃそれ食ったら、一緒にやるか?」
「うん!」
――――
――
―
はぁ……帰ってきてしまった。
本当にここは、自分の家なのにとにかく居心地が悪い。あにぃの家の方が何億倍も居心地がよかったなぁ。
「よぅ。家ではおしまいか?」
「……なんの用?」
あーあ……嫌なやつに出くわしちゃったなぁ。帰っきて1番に見る顔がこいつか。いやまぁ、他のメンツでも嫌なのは変わりないんだけどさ。
「おいおい。兄貴にそんな態度はないんじゃないか?」
「へぇ、驚いた。私の事まだ妹だと思ってたんだ」
「あぁ思ってるとも。出来の悪いクソ妹だってな」
「はいはい。出来の悪いクソ妹ですいませんね。クソ兄貴。じゃ、私は部屋に戻るから」
ったく……本当にうざったいな。なんでこう、人を馬鹿にして見下した言い方しか出来ないのかな。心底ムカつく。
「待てよ」
「なに?」
「アラタのところに行ってきたんだろ? あいつはどうだった?」
「あんたが、あにぃのことを気にするなんて、珍しいこともあるもんだね」
「ま、一応俺の弟だからな」
ふん。よく言うよ。
本当は、私とあにぃのことなんて兄弟だと思ってないくせに。
「元気だったよ。それにあんたと違って、昔と変わらない優しいあにぃだったね」
「そうかそうか。相変わらず、お前には甘いんだな」
「は?」
「まぁそりゃそうだよな。なんせ、またアラタに助けてもらったんだからな」
助けてもらった? もしかして、私が声優になることをクソ親父に説得したことを言っているのかな?
「ほんと、あいつも可哀想だな。出来の悪い妹のせいで、自分の夢を諦めることになるんだからよ」
「ちょ、それどういうこと!?」
「なんだ。アラタから聞いてないのか? まぁあいつが言うわけないか。なんせあいつは、お前に甘々だからな」
「いいから早く話して」
「あぁいいぜ。お前のその顔が見たかったからな。例え嫌だって言っても聞かせてやるつもりだったしな」
――――
――
「ま、そういう事だ」
「……」
あにぃ……なにしてんのよ……。こんなことになるなら私は……。
「へへっ、せっかく大好きなあにぃがやってくれたんだ。頑張って声優になってくれよ。クソ妹」
「……」
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