睦美は那々美に憧れる

御月

Unlucky GIRL & Lucky GIRL

 幸運は奪われた。

 誰に……とは言いたくない。


 塾の講義のこともあり、1駅手前で降りた。冬の夜道を散歩するように家路を辿る。


「プレアデス星団」


 ぼんやりしているのは星団だから。明るい星も連なっているそう。


六連星むつらぼし……だったか」


 車メーカーのエンブレムらしいが、私には関係ない。むしろ私は嫌悪感を抱いていた。


(また6……しかもボンヤリって、北斗七星なんて誰でも知ってる明るい星なのに)






「姉ちゃんおかえり」

「ただいま、那々美」


 双子の妹が出迎えてくれた。一卵性双生児の私と那々美。

 那々美は妹。要領よくて頭がいい。私と見分けるために親が染髪したライトブラウンが華やか。ぬいぐるみを抱えていたところを見るに、これから寝るところか。時刻は11時になりそうだ。


「睦美!お風呂冷めるよ?」

「はぁい」


 聞こえてくる母の声。私はパジャマと下着を準備して、お風呂に向かった。






 鏡に那々美が写る。髪は黒で重苦しく、疲れた私の顔が。

 6月30日の睦美、7月1日の那々美。才能も幸運も、那々美が持っていた。

 よさの全て譲った出来たお姉ちゃん。私の価値はそれだけ。

 無言で鏡にシャワーをぶっかける。顔がぐちゃぐちゃに歪んだ。






 席替え。

 担任はくじ引きで席を決める。

 目は、自然と彼を追っていた、好きな人を。腕の筋肉がセクシーな彼は、黒板にネームプレートを貼り終えていた。14番……隣は、まだ!

 私の待ち時間に、片側の22番が埋まる。残るは逆の6番。


(今まで6ばかり。幸運に及ばない6……悪魔の数。これは!?)


 引く……開く。6番っ!!


 ネームを張りにいくと……6番に那々美のネームがあった。


(……どう見ても、6だ)


 先生に聞きに行く。


「あ、すまん。作ったときにタイプミスで6番がふたつあってな? ほれ、手の下を見な」


 ……印字された6番の横に『+1』の手書き。




 もういっそ、帰りに本屋で世界を滅ぼす本でも買って帰ろう。うん。





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睦美は那々美に憧れる 御月 @mituki777

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