2 色々な事の終わり
「……」
その後もう一度詳細不明のレイアの力を使わせてもらい、諸々の治療を行った訳だが、流石に嫌悪感で吐きそうになっている事だけは治らなかった。
それでも吐きそうになりながらもレイアを背負ってユーリの遺体を探す事にした。
遺体を探して何かしらの形で処理しなければならないという事もあるけれど、なにより本当にこれで終わったのかという事を確認しなければならなかったのだ。
……だが。
「……ねえな、どこ行った」
ユーリの体は八尋の一撃により高い推進力をまとって弾き跳ばされていた。
そしてその方角へ、地面を跳ねた痕跡を辿り進んでいった訳だが。
「……逃げる力がまだ残ってたか」
もしかすると転移魔術を使ってこの場から一時的に逃げたのかもしれない。
……だけどあの状態でこの一撃を受けて、まさしく致命傷と考えて差し支えないようなダメージを負わせた筈だ。
あの時自身がレイアと出会った時のような奇跡でも起きなければきっと生きてはいない。
あの一撃で生存しているなんて都合の良い事はそう起きない。
(……駄目だな)
ユーリを殺し損ねたという可能性を都合の良い事だと考えてしまう自分がいる。
(なに考えてんだ今更……)
もうやった事は変わらない。
変えられない。
ユーリを殺そうとして、殺した。
その事実はもう変わらない。変えられない。
(……俺がしっかりしないと)
もう踏み出した歩みは戻せない。
刻んだ足跡が消える事も無い。
だったらその上で、何ができるかを考えていかないといけない。
レイアの為に何ができるのか。
ユーリに対し、何をする事が償いになるのか。
……そういう事をとにかく、とにかく考えていかないといけない。
そう、考えていた時だった。
「……八尋」
背負ったレイアから声が聞こえてきた。
それが聞こえてきたから、一旦呼吸を整える。
……しっかりしないといけないから。
「……終わったよ、レイア」
平静を装ってそう言う。
だけどきっとレイアの事だ。そんな風に虚勢を張っているのもバレてしまっているのだろう。
「…………そうか」
それでも何も言わないでくれる相手だという事実は、多少なりとも呼吸を整わせてくれる。
とにかく、これで終わり。
色々な事が、これで終った。
本当に、色々な事が。
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