第18話
「ようやくこの階層も完成したな。ラビ、今維持にどれぐらいのエネルギー使ってる?」
《現在60%を使用中です》
「ラビも大分成長したけど、流石にここを作ると大分余剰エネルギーを使ってしまったな」
ラビは成長するとエネルギー回復速度も上がるため、余ったエネルギーで新しい施設を作ったり、新しい階層を作ったり出来る。
ただ新しい施設や階層を作っても、維持にもエネルギーが必要な為、あまりギリギリまで使うとラビが成長するまで何も出来なくなる。
その為少し余裕を持たせる必要がある。
直接エネルギーを使って魔石を生み出したり、ゴーレムコアを生み出したり、何か罠を使った仕組みを生み出そうとすると、エネルギーが足りなくなる恐れがある。
維持に必要なエネルギーは、主に自動修復機能に使われてる。それにより施設は綺麗に維持され、鉱石なども時間はかかるが再生される。
そして今回作ったのは見渡す限りの広大な草原だ。
上空に見える空は、実際の空を天井に投影しているらしい。太陽の光は刻印魔法で再現している。
実際の天井の高さはおよそ50メートル位だ。
草原の広さは縦横それぞれ5キロメートル位にしている。
そして入り口以外の壁は鏡になっていて、刻印魔法のアブソープションが発動している。ぶつかっても安心。
そして草原の中央には泉がある。直径100メートル位の丸い池だ。
そんな訳でかなりのエネルギーを使用している。
何故こんな階層を作ったか。それは先日グリンが持ってきたモンスターだ。
最近は森の奥に行って採集や狩りを行っている。そこで発見したのがホーンバイソンの群だ。
重量を生かした突進をしてくるモンスターだが、これを何頭も仕留めて持ってきたのだ。
因みに今は探索班は20人になっている。
それを食べたんだけど、あまりにも美味しかったので、ラビに取り込んでもらい、ここを作ったのだ。
「ホーンバイソンを10頭作ったら、どれぐらいエネルギー使う?」
《生成するのに10頭で約10%使い、維持に約5%使用します。ホーンバイソンが死亡した場合は自動修復機能により約50時間後に自動で生成されます》
「分かった。ありがとう。無理させてごめんね」
《マスターに貢献出来て嬉しいです》
「そう言ってもらうと僕も嬉しいよ。いつもありがとう」
僕の眷属と言っても感謝の気持ちは大切だよね。ラビだって生きてるんだから。
「それじゃあギリギリだけど、20頭生成してくれ」
《かしこまりました。マスター》
「おぉぉぉぉ。沢山出てきたな。このモンスターは安全なんだよね?」
《はい。私の眷属になるので単純な命令なら従います。複雑な命令をしたい場合は高度な知性を持ったモンスターが必要です。人を襲わないように命令してあります》
「ありがとう。お、早速草を食べてるな。よしよし。あ、そう言えばミルクって出るのかな?」
《現在10頭はミルクが出る状態で生成しています。変更しますか?》
「いいよ。むしろ助かったよ。これで新鮮な肉とミルクが取れるぞ」
僕が住んでいた村は農業の村だから作物はそこから買っているが、それ以外はノーラン商会に運んで来て貰っている。
これで自給自足の目処がたったぞ。
後は小さな海を作って海のモンスターを飼ったり、この辺で栽培出来ない植物をダンジョンで生成して貰えば完璧だ。
でも、それには全くエネルギーが足りない。
まあ焦る必要はない。現状困ってないからな。
「よし、じゃあ戻って皆に教えてやろう」
この階層の入り口には沢山の部屋があるが、入り口は巨大な昇降機になっている。
魔道車も乗れる位大きい。動く壁の罠を利用して作った物だ。きっと皆驚くぞ。
「グリン、エアバイクの調子はどうだ?」
「控えめに言って最高だな。森の中はそもそも速度出せないから使いやすいぜ」
あれからエアバーストだけのエンジンを作って探索班に乗って貰う事にした。
40キロ位しか出せないけど、森の中なら使えると思ったからだ。燃費は悪いけど、その分魔石を沢山乗せている。
それにどうせ毎日帰ってくるから、勝手に魔力が回復するから魔石の交換の手間もかからない。
「武器の方はどうだ?」
「こっちも良い感じだな。誰でも簡単に使えるし、交換も思った程手間もかからないしな」
爺さんとゴドランとで開発した新しい武器は、簡単に言うと拳銃だ。
ライフリングを刻んで、そこから魔鉄とライトニングダイルの角の粉末を合成した弾を打ち出す。
撃ち出す場所にはボムの刻印と、雷撃の刻印が刻まれている。その2つが発動すると、弾に雷が帯電して、爆発の力で弾を打ち出す。
発射された弾がモンスターの体の中で止まると、中で電気が放電して中から攻撃するえげつないやつだ。
魔石は20発撃てる分の魔石をマガジンの底に収納して、弾が20発入るようになっている。
マガジンを交換すれば何発でも撃てる優れものだ。
ただ、サイズの問題で認証システムはない。ゴーレムコアを入れるスペースが無かったからだ。なので誰でも使えてしまう。
だから管理は厳重にする事にした。今回は試験の為に撃ちまくって貰ってるが、試験が終われば緊急時以外は使わないようにさせて、警備員にも持たせる予定だ。
まあ弾その物が高価だし、大量生産出来ないからな。
弾はガストン爺さんに頼んで、錬金班の時間がある時に作ってもらおう。
「でも試験は明日までだからな。それが終わったら緊急の時以外は撃つなよ」
「分かってるって。じゃあ明日に備えて弾積めしてくるよ」
「まあ待て、今各班の責任者を集めてるから会議室に集合な」
「お、おう」
「皆集まったな」
集まったのは各班の責任者だ。
錬金班はガストン爺さん、鍛冶班はゴドラン、組み立て班と設計班のベルトロ、因みにゴドランの紹介でここに来た人だ。
それから魔道具管理のエスト。この人はガストン爺さんの紹介で、魔道具は好きだけど作る事は出来ないって人なんだけど、一度聞いたら忘れない魔道具の知識を生かして魔道具の管理を任せてる。
それから探索班のグリン。会計、資材、人員管理のエリン。警備、採掘班のバッカス。料理、給仕のサラエ。
サラエは村の祝福の時に食材に愛されていて、料理に向いていると言われてた女の子だ。
最後に施設管理のリナ。ノーラン商会から雇った人だ。言葉使いがとても丁寧だったので、施設の案内や清掃、点検等を任せてる。
合計9人が集まってる。
「今回集まって貰ったのは、新しい施設が完成したからだ。格納庫に出来た新しい扉から地下に進むと新しい施設に行ける」
「今回はどんな施設なんじゃ?」
「今度はかなり広い草原だよ。そこでホーンバイソンを飼育している。もし肉を確保する時は探索班にお願いしてくれ。人を襲わないけど、解体するまでは暴れたら危険だからなるべく近づかないように。もし草原に行く時は必ず探索班の人を連れていってくれ」
「おぉぉぉ。これからは新鮮な肉が食べ放題か。酒がすすむな。しかも高級なホーンバイソンか」
「え?ホーンバイソンって高級なの?確かに美味しかったけど」
「なんだ?知らんかったのか。草原にしか生息してないし、あの巨大で遠くから群れで突進してくるからなかなか仕留められないんだよ」
「知らなかったよ。村では肉は全部高級品だから」
「して、何頭飼育しているんだ?」
「今は20頭で、10頭はミルクも取れるから、出来ればチーズとかも作って欲しい。復活には50時間かかるから管理はエリン達の班で頼んだよ」
「分かったわ。それとダクター兄さん、人員の増員をして欲しい。最近素材が沢山増えて、管理に忙しくなってきてる」
「分かったよ。またノーラン商会に聞いてみるよ。見習いとかでも良いの?」
「見習いでも良いよ。私達で指導するから」
「分かった。地下に行きたい人はグリンに着いていってくれ。それとグリンは屋根が付いてないトラックを乗って言ってくれ。試しに1頭仕留めて欲しい」
「分かった。任せとけ」
「取り敢えず、探索班には全員許可を出すよ。あと各責任者にも許可をだすよ」
今日はステーキだな。
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少し修正箇所があるので明日は更新できません。
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