第7話
「おはようダクター。やっと帰って来たのか」
「おはようグリン。まあなんとか帰って来れたよ。水汲み終わったら一緒に森に行かないか?」
「おう。やっとか。待ちわびたぜ。色々集めて運び込んだから楽しみにしてろよ」
ほんと嬉しそうだな。まぁ2年近くも待たせてしまったからな。
「じゃあ後でな」
そのまま家に戻り、水を補充し終わったら、森にいく準備をして大きめの鞄を背負って、いつもの場所に着いた。
「待たせたな、ダクター」
「僕も今来たところ。よし、行こうか」
すると突然後ろから声をかけられた。
「ちょっと待ちなさい」
「あれ?エリン?どうしてここに?まさかグリン、つけられたのか?」
「二人とも私に隠してる事があるんでしょ?そんな事お見通しよ。お兄ちゃんをつけるなんて朝飯前なんだから」
そう言いながら、年齢に似合わない豊満な胸を反らせるエリン。本人は偉そうにしてるつもりかもしれないが、ただただ可愛いだけだ。
「エリン、俺達は今から森に入るんだぞ?お前を連れて行く事は出来ない」
「なら私は勝手に着いていくから気にしないで」
「おいグリン、もうこうなったら一緒に連れていった方が安全じゃないか?」
「でもなー」
やれやれ。
妹が心配なのは分かるが。
やはりここは筋肉の話しかないな。
「それとも守りきる自信が無いのか?お前の筋肉は飾りなのか?」
「俺の筋肉は最強に決まってるだろ。妹一人と親友一人位余裕で守ってやるよ」
袖をまくり上げて力こぶを作るグリン。まあ単純で良かったよ。その筋肉で妹を守ってやれよ。
「なら決まりだな」
すると突然、グリンが真剣な顔で話だした。
「エリンよ。連れていくのは良い。だがしかし、森はとても危険な場所だ。俺達の指示にはきちんと従うこと。約束を守れなかったらもう連れて行かないからな」
「分かった」
エリンは口を強く結び、拳を力強く握っていた。気合いを入れるのは良いけど、今から緊張してたら持たないぞ?
そんなこんなで僕達は3人で森の中に入る事になった。
「目印はちゃんと残ってるな」
「おうよ。ちゃんと定期的に来て印をつけ直して、縄張りの主張は怠ってないからな」
縄張りの主張って何だよ。一体なにしてるんだ?
まさかこいつ、縄張りの主張って言ったらあれだろ?
犬とか猫がやるやつ。
いや、これは聞かないほうが良いかもしれない。僕の胸の内にしまっておこう。
「エリン、さっきから口数少ないが大丈夫か?」
「ダ、ダクター兄さん、だ、大丈夫よ。ほ、ほら、森の中って歩きにくいから」
恐らく怖いのだろ。僕の服を掴んで放さないし。
「ダクター、エリン、見えて来たぞ」
「兄さん、これって。。。」
「桃の樹だよ」
そしてグリンは飛び上がり、剣を抜いて枝を斬り、桃をひとつ掴み取った。
「「おおぉぉぉ」」
「エリン、これは甘くてメチャクチャ美味しいぞ」
「ありがとうお兄ちゃん」
そう言って一口食べるとエリンが固まった。
「これ凄く美味しい。こんなに美味しい物を二人だけで独占してたなんてズルい」
おぉ。めっちゃ睨んでる。
「それにはちゃんとした理由があるんだよ」
「どんな?」
「まず一度摘み取ると、周りに桃の香りが漂って獣やモンスターがよってくる。ほら、あんなふうに」
「きゃっ」
「グリン」
「任せとけ」
するとグリンは返事と同時に剣を抜き、ゴブリンに襲いかかった。
「そして2つ目は保存が出来ないって事だな。これ、1日で腐るんだよ」
「えーー。持って帰ろうと思ってたのに」
「それともう1つ、この樹は周囲に迷いの魔法を発動してるみたいで、何故か僕と一緒じゃないとこれないんだよ」
そしてグリンの勝負は一瞬で終わった。まさに圧倒的だった。
「流石はグリンだな。僕があげた片手剣をこうも簡単に使いこなせるとは」
そう、この剣はグリンの為に買ってきたのだ。いくら素手で倒せるって言っても、やはり武器はあった方が良い。
買った時に試しに使ってみたが、僕には重すぎて使えなかった。やはり鉄の塊は重いって事だな
「お兄ちゃんが強いのは知ってたけど、こんなに強かったなんて、知らなかった」
「よし、食べ終わったみたいだし、そろそろ移動しよう」
そうして俺達の秘密基地に到着した。
「へー。こんな所に洞窟なんて有ったんだ」
「まあ俺とダクターの探索の成果だな。あ、ダクター、取り敢えず怪しい物は片っ端から集めて奥に置いてあるぜ」
「お、じゃあ早速確認してくるよ」
奥に進むと木の箱が大量に置かれている場所があった。恐らくこれがグリンが森で集めた使えそうな物だろう。結構沢山あるな。
「どうだ?」
「取り敢えず植物系は僕には分からないな。いくつか持って帰って調べて見るよ。王都で植物図鑑も買ってきたし」
「なら次はこっち側の箱だな。こっちは自信あるぜ」
なんの自信だよ。
まあとりあえず開けてみるか。ってかこの箱また随分と重いなって、あれ?まさか、まさかこれは・・・
「おいグリン、これをどこで?」
「おう、実は縄張りの主張しながら周辺の探索もしてたんだが、他にも洞窟を発見してな、モンスターはいなかったが地下に続く階段とかもあったから、恐らく崩壊したダンジョンだと思う。そこで拾ってきた」
「大発見じゃないか。これは恐らく魔鉄だぞ?詳しくはガストン爺さんに聞いてみないと分からないけど。これで色んな物が作れそうだな」
「本当か?もし前みたいな凄いの作るんだったら今度は俺も乗せてくれよ」
「分かった。今度は一番に乗せるさ」
「約束だぜ。へへっ」
あー。やっぱあの魔道車乗りたかったんだな。悪い事したな。
「お兄ちゃんだけズルーい。私も乗りたい。ね?良いでしょ?」
「乗せても良いけど、エリンの場合は安全が確認出来てからだな」
「え?なんでお兄ちゃんは安全じゃなくても良いの?」
「グリンの筋肉は鎧並みに頑丈なんだよ」
「あ、成る程ね」
「へへ。どうだ。お兄ちゃんは凄いだろ?」
ほんとこの兄妹は仲いいな。
あれ?何か他とは全然違う物があるぞ。これは何だ?鉱石には見えないけど。
軽く叩いてみたけど、これは相当硬いぞ。しかもまるで加工したみたいに綺麗な球体だな。
「どうしたんだダクター?」
「いや、これだけ加工したみたいに丸いし、異常に硬いんだよ」
「あぁ、これか。洞窟の一番奥に転がってたから良い物かと思って持って帰って来たやつだな」
「そっか」
んー。金属には見えないけど。何かあるのか?試しに魔力を流してみるか。
あれ?何かどんどん魔力を吸い込んでいくんだけど?あれ?
「どうした?」
「いや、なんかこの玉メチャクチャ魔力を吸収するんだけど。もしかしたら魔力バッテリーみたいに使えるかもしれない」
「バッテリーってなんだ?」
「ああ、そうか、魔石ってあるだろ?普通は使い切ったらもう使えなくなるのは知ってるだろ?でももし、使った魔力を補充出来たら魔石を買わなくても良いって事だ。そうやって繰り返し使える物をバッテリーって言うんだ」
「成る程ね。で、それは使えそうなのか?」
「んー。まだ分からないな。どれだけ吸収出来るかも分からないし、膨大な魔力を含んだ魔石は危険だから、これだけ吸収するこいつは危ないから持って帰れないしな。取り敢えずここで実験するしかないな」
「そんなに吸収するのか?ダクターの魔力量でも足りないのか?」
「ああ。多分全然足りないな。まだまだ吸収しそうだよ」
実は僕は異常な程の魔力量なのだ。でも実はあまり使い道がない。
魔力を大量に必要とする人は魔法使いか、錬金術師か、鍛冶師位だ。
しかし、僕には魔法の才能が殆んどない。僕が使えるのは錬成魔法位だ。
まぁ宝の持ち腐れってやつだな。
「お、殆んど魔力がなくなった。今日はこれぐらいにして荷物を持ったら村に帰ろか」
「おうよ」
「うん」
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