今回はボクも行くね
もちた企画
第一章 幼少期
第1話 プロローグ
「寺川さん、このあとどうです?」
ぇー帰って寝たい…
「いいですね、どこに行きます?」
「今すっごい顔してましたよ」
ジト目で俺を見るのは職場の後輩で島津君だ
まだまだ若いのに人付き合いが俺より上手いんだよな…。陽キャというか甘え上手なんだろうか。
「そんなことないよ」
歩く方向に向き直って応えたが島津君はずっと見てくる。ヤダなぁ、あはは。
「寺川さんって普段何してるんですか?」
「普段は仕事かな、島津君と一緒だよ」
「いやいや、休みの日とか仕事終わったらですよ」
手を顔の前で振りつつ違うんスよね〜と苦笑いしている。お前は多趣味っぽいよなこんチキショーって
確かに振り返ると趣味がないな?
あれ?なんかしてたっけ??
「仕事と食べること寝ること以外何やってるんだろうなぁ」
改めて考えても過ぎた時間は戻って来ない。
若い頃は時間が足りない→遊ぶことが多過ぎて
今も時間が足りない→気が付けば寝る時間
このスパイラルはいつからなんだろうか?
立ちぼうけの俺に島津君は屋台を指差し
「アレってどうやって入るんですか?」
んなバカな。
「は?目の前のイスに座ればいいじゃん」
「行ったことないんですよねぇ、<一見さんお断り>オーラというかメニューも分からないし一歩踏み込む勇気が無いんですよ」
ふむふむ
なるほどね俺も無いけどいい機会か。
そうか、じゃあ
「行くか」
「っやりぃ!お供します」
調子のいい島津君をあとに屋台の暖簾を片手で押しひらく
「やってる?」
いらっしゃいとオヤジがお出迎え
1人屋台じゃなくて娘さん?がおでんを仕込み中だった。
「2人いいかい?ビール…でいいか?ビール二つとおでんをオススメで頼む」
座りながら確認して注文した。
三人掛けかな?俺が真ん中島津君が右側左側は空席だ。
あいよとビール瓶片手にグラスを並べる
おでんは娘さんチョイスらしく平皿にタマゴ・大根・ちくわを乗せて
「お兄さん味噌は別皿?そのまま付けていい?」
「俺のは付けちゃっていい」
「島津君は皿いる?」「…えっあ!はい皿ください」
「あぁ初めてだったもんな」(俺もだが)
屋台がか?とオヤジが話に乗ってきたのが皮切りに島津君はいじられ始める。
「まず突き出しはないから自分で持ち込むのがマナーで俺は柿ピーを持ち歩いてるし、このオヤジはさきいかと酢昆布だ」
そうだ、そうだと話を合わせるオヤジ。
へぇーと背筋を伸ばして聴く島津君(素直だな
「全部嘘ですよ」
スカしをくらった島津君に娘さんが助け舟を出す
「メニューはここ、好きなの頼んで大丈夫だけど焼き料理は時間もらいますよ」
「メニュー全制覇の楽しみもあるよね」
俺がそう言うと娘さんが呆れた顔をしてため息をする
「そりゃ流石に面倒だな、毎回違うの頼んでくれ」
オヤジがコップの水を飲みながら応える
それ水か??
「じゃあ今回はおでんで!次回は違うのにします」
やけに上機嫌な島津君が鼻息を荒くする
常連目指して頑張れ!島津君
一人暮らしが長すぎて、料理自体が自分でできるからあんまり来ないんだけどね。
ふと顔を上げると、テレビが流れているニュース番組だ。
日本の反対側ブラジルでは大きな地震が続いているらしい。
日本もそのうち大きな地震が来るんじゃないかと言われて、早数十年。
今もこうして何もない日々が続くと思っていた。
「寺川さんあれなんですかね」
島津君が指刺した方向を見てみると、街路樹が一斉に揺れていた。
その揺れがだんだん手前に近づいてくると同時にざわめきが広がる。
周りのオフィスビルも揺れ始めて、屋台で注文したビールのコップが揺れてこぼれてしまう。
「地震だな。避難しよう。親父お代は?」
「そんなの後でいいから今は避難だな」
親父と娘さんは避難先である。セントラルタワーに向かった。俺と島津君も向かおうとしたが、島津くんの前に自転車が倒れ行く先を阻んでしまう。
自転車をどかして島津くんを先にいかせ、自分も向かおうとしたが、後から来た人に手を取られ声をかけられた。
「よかった。まだここにいたんだね」
振り返ると小さな少年がにっこりと笑ってこちらを見ていた。何故かわからないが体が動かない。
揺れは収まらず、島津君はこちらに向かって何か叫んでいる。
時間の流れがえらくゆっくり流れて、そこにいる小さな少年から目が離せなかった。
街路樹が倒れてきて、少年を守ろうとしたことだけは覚えている。必死というか、勝手に体が動いた。
「あぶねぇ!」
叫んでみたもののうまく動けずツンのめる。
イィィイィィィィン
意識が遠のく、耳鳴りがひどい。何も考えられなくなる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます