第2話 転生は突然に
黒い大地を踏みしめて歩いていた。
いつから歩いていたのかわからないだけど、道はまっすぐだし、他にすることもないし、考えもまとまらないのでそのまま歩き続けていた。
いかんせん体が重い。
少しずつ上り坂になっているのがわかる。山を上っている感覚だ。
道の周りには何もなくただただ歩かされている感じ。
もう少しすると坂の向こうには古びた神社のような社?が見える。
真っ直ぐな道をただ歩く。
あともう少しのところで声をかけられた。
「こんにちは〜」
「わっ」
真横からの声にビックリして声が出た。
「突然声をかけてすいません。寺川さんですか?」
俺と同じ位の年齢(おじさん)が頭を下げて訪ねてきた。最初は知り合いかなと思ったが、どうもそうではないらしい。
「うちの主人が無理を言ってすいません」
重ねてお辞儀をして、何か俺に手渡してきた。
「これはうちの主人からの贈り物です。大事に持っていてくださいね。」
手渡されたものを見てみると、小さな指輪のようだ。
結婚すらしていない俺に指輪を渡すとは、なかなか洒落た人なんだなと思った。
「少し小さいが、小指にだったらはまりそうですね」
お前のじゃねえよと突っ込まれるかと思ったが、何も言われないので、そのまま右手の小指に付けた。
「サイズが合ってよかったです。主人は上の社にいらっしゃいますのでどうかそのまま歩いてください。その指輪のおかげでだいぶ歩きやすいと思います」
そう言われるとずいぶんと足取りが軽い。体重が軽くなったのか重力が軽くなったのか歩くというよりかは跳ねている感じだ。
「これはすごっ...えっ?!」
と驚いたのも、そこまででもっと驚いたのは自分の服がボロボロになっていたことだった。
一昨年に新調したばかりのスーツがちぎれていた。もうこれは来ていたら不審者にされてしまう位。
「なんでこんなにボロボロなんだ」
「服でしたら、こちらにご用意がありますので、こちらでどうぞ」
迎えられた、そこには、時代劇で金○さんが着られていたような和服が置かれていた。
サイズとかあるのかなぁと考えていると
「フリーサイズです」
「じゃあ大丈夫ですね」
あれ声出して言ってたっけ?疑問を浮かべると答えてくれるように思えた。
もしかして全部筒抜けですか?と心で思っていると。
「ある程度は」
答えられた。
ーーはっ!!
「俺と同じおじさんと思ってすいません」
「いえいえ、大丈夫ですよ。おじさんですから」
がっつり伝わってたようで苦笑された。
服はボロボロだけど、体はなんともない何かあったのかな?
「その疑問も、全部主人が知ってますよ」
さぁさぁと服を着せてもらい社に向かうことになった。
?でいっぱいだったが、とりあえず歩いた。
この指輪のおかげで、かなり体が軽いさっきまでの重さはなかった。
「お邪魔します」
あっという間に社に到着した。そこは湿気が強く草がボーボー生えていた。ぶっちゃけ、廃墟だ。
扉が壊れていて中まで見える。そこの中心には座布団があり、さらにその奥にあの時の少年が座っていた。
むしろ目が合っている。
大きめの白と赤の羽織を羽織ってあぐらをかいて背筋を伸ばして坐禅?よく分からないがピシッとしていた。
髪は俺と同じ黒髪黒目だが髪のツヤがすごいな。
「待ってたよ。こちらへどうぞ」
少年は変わらず、笑顔で俺を手招きした。
招かれるままにそのまま座布団に座る。
少し沈黙。
「君は「急に呼んでごめんね」
言葉をかぶせるように少年に謝られた。
何?なんだろうかと戸惑ってしまう
「いろいろ頑張ったんだけど、だめだったんだ」
「そうだったんですね」
一応の相槌。そして敬語。
昔やってたテレビっぽく頷いてみる。
さっきの人がうちのご主人と言っていたからこの少年はきっと偉い人だ。
「偉いつもりはないけどね」
!!
またやってしまった。
この感情が言葉になってしまうのはどうにかならないものか。
「多分無理だと思うよ、今は肉体がないから考えることは筒抜けだよ」
だから服も本当は必要ないんだけどね。
少年は自分の服を引っ張って言う。
なぜかぼーっとしてしまうけど何か大事な話をしているっぽいな。
「今の君に話があるんだけど、答えて欲しい。質問は1つ」
右手の人差し指を俺の前に出して不敵に笑う少年。
スタスタと歩きながら近づいてきたと思ったら、そのまま肩に手を置かれる。
「寺川くん、君は異世界に興味ある?」
「はい」
はい?と声に出して首をひねる。
少し目を見開いていたが、すぐに先程の笑顔に戻り俺の隣に並んで立った。
「いいね、じゃあ早速行こう」
「ん?」
少年が楽しそうに言うと、目の前に白いモヤが広がって、風が舞う。
「向こうに着いたらまた声かけるからその時はよろしくね」
さっきまで横に並んでいた少年が俺の後ろに回る。
トンっと腰を軽く押されると風が吹いている穴?枠?へと吸い込まれた。
風が強い、いや強く吹くレベルじゃなくて…
…落ちてる??
白い空間から一気に周りが開ける。
「ぉぉ」
日本でよく見る上空からの映像に似ている。が、明らかに山間部でド田舎という感じが第一印象。
小高い山が続いているが、反対側を向くと大きな海が広がり街も見えた。
怖いと言う感覚はなく、ただただ落ちていく。
このまま落ちると地面にぶつかるとかんがえていたが、途中で視界が消えて何か話し声が聞こえてきた。
目は開けれない。
暖かい場所から、急に寒い場所に出された感覚。
寒っ!なん、なんだ苦しい、うっ!
「おぎゃぁ、おぎゃぁ」
言葉が出てこない。助けを求めて大きな声で叫んでみる。
「はい〜大きい産声ですねぇ〜」
安心感のあるおばちゃんの声がまっすぐ自分に届くのがわかる。上下に小さく揺れるの心地良い。
「アイザおめでとう、元気いっぱいの男の子ですよ」
それにしても寒いな。さっきまで気温気にならなかったのに。寒い寒い。
「おぎゃぁ、おぎゃぁ!」
何か布のようなものを巻かれたが薄くて寒いままだ。
背中を擦ってもらい身体が暖かくなってきた。
「まだ寒いだろうからこれに包んでおくわね」
さっきのおばちゃんが俺に毛布のような物を薄い布の上から包んでくれる。
「ほら、お母さん。アイザ頑張ったわね」
「ふぅぅ、ありがとう」
手から手に渡されてるのが分かる。
どこにいるんだろ?でもなんか眠いから寝るか。
オデコに何度も何かを当てられて夢心地でそのままぐっすり眠ってしまった。
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