勇者パーティの雑用係が羨ましい? 代われるなら代わってくれ

ノンギーる

七番目―ラッキーセブンー

 グゥアァアアアアアア!!


 この世界の最強種の一角に位置するドラゴンが悲鳴を上げる。こんなはずではなかったのにと。

 

 猿が6……いや隠れた位置に1匹いるので7匹。身の程を知らぬのか、格の差を理解する知能すらないのか。どちらにせよ我に挑もうなどと思い上がった獣を見逃す理由はない、これまでと同じように屠ってやろう。


 そう考えて彼らに、勇者一行へ挑んだドラゴンは直ぐに己の行動を後悔することになる。


 自慢の爪は騎士の技術に受け流され、噛み砕こうとすれば武闘家の一撃によって牙が折れ、苛立ち紛れに放った業火の息吹は僧侶の奇跡に防がれ、距離を取ろうと羽を広げ飛び立てば魔術師の魔法によって撃ち落される。

 しまいには錬金術師の薬品によって自慢の鱗は腐食してしまい、脆くなった首を戦士の剛腕によって一刀両断されてしまった。


 ドラゴンは知らなかった。人間の中には稀に勇者と呼ばれる、かってドラゴンの王と肩を並べた魔王すら滅ぼした化け物が生まれることを。

 この6人がかっての勇者と同じく、世界に蔓延る邪悪を滅ぼすため各国の王によって集められた勇者化け物と最後まで気づきはしなかった。


 あり得ぬ結末、我が猿ごときに負けるなんて! 決して許せぬ!!

 

 今まで遠ざけられていた死が迫り、溢れんばかりに存在した命の輝きが零れ落ちていく中、ドラゴンは自らを殺した猿達を——勇者パーティを憎み、恨み、呪っていく。


 オォォオォオオォォオオオオ!!


 断末魔と共に放たれた呪詛。だがそれはドラゴンを殺害した6人には向かわず、隠れていた1人にのみ注がれていく。


「あぁあああああああ!! 死ぬ、死んじゃううううううう!!!!!!」


 彼こそは勇者パーティの7人目。世間ではラッキーセブンと呼ばれる勇者一行の雑用係を手に入れた幸運な一般人であり、実際は勇者一行への不幸を肩代わりする人身御供アンラッキーセブンである男は、その役目を今日も全うしたのである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る