災い転じて、実はラッキー!?
嶋月聖夏
第1話 禍転じて、実はラッキー!?
今日は朝からアンラッキーだった。
目覚ましが壊れていて、朝寝坊したのだ。それで朝ご飯を食べる暇がなく、大急ぎで学校へと走った。
途中で赤信号に引っ掛かり、それで回り道をして少しで速く行こうとしたら、前を歩いていたサラリーマンがいきなり空のペットボトルをポイ捨てしていったので、それで転びそうになった!
急いでいるのに、私がゴミ箱へ入れなきゃならなくなって…、もう最悪!
それでも、何とか学校に着いた。ギリギリ五分前に教室へと入れたのだ。
「…おはよー!」
汗だくになり、紺色のブレザーの下の白いブラウスの袖をついまくりたくなる。
だけど花の中学一年生の女の子としては、さすがにそれはちょっと…、と思いとどまり、すでに真ん中の席でお喋りしていた美優ちゃん達の元へと向かった。
「…あっ!?菜々美ちゃん!良かった!無事だったんだね!!」
いきなり美優ちゃんにそう声をかけられ、私は思わず「え?」と戸惑う。
「さっき、交通事故があったんだよ!もし、菜々美ちゃんがいつもの時間で、通学路を歩いていたら巻き込まれていたかもしれなかったんだよ!!」
スマホで見せてくれた交通事故の現場は、確かに通学路だった。…もし寝坊して、いつものように歩いていたら…と思ったら全身から力どころか血の気が引いた。
「…ちょ!?大丈夫!?」
「…うん、朝ご飯食べてこなかっただけ」
私がふらついたのを見て、美優ちゃんが体を支えてくれる。
「あ、よかったら食べる?昨日、作りすぎたからみんなに食べてもらおうと持ってきたんだ」
美優ちゃんの隣に居た、明奈ちゃんが紙袋を差し出してくれた。
「わあ…!」
中に入っていたのは、クッキーだ。しかも、いろんな種類の。
「私達はもう食べたから、全部食べていいよ」
「ありがとう…!」
よかった、これでお昼までもつ。
「昨日のアイドルのライブの配信、見た?」
友情のありがたさに感激していたところ、明奈ちゃんがそう話し始めた。
「…ごめん、見られなかった」
昨日の夜、さっそく見ようとしたらいきなりお母さんから「勉強しなさい!」とタブレットだけでなくスマホも取り上げられてしまったのだ。
しかもリビングで勉強させられたから、結局一度も見られなかった。
「大丈夫だよ!見逃し配信があるし!しかも、今日の配信には、追加のシーンがあるんだって!」
それを聞いた私は、心から嬉しかった。今日はお母さんは夜勤だから、安心して見られる!
「おーい!おまえら、席につけ!」
担任の先生が入って来たので、私達は慌てて席へと移動した。
「突然だが、テストをする!」
一限目から抜き打ちテストなんて、アンラッキーすぎる!
ふと思ったら、昨日からアンラッキーな事が続いてない!?これで七回目なんですけど!?
どーしょ!?とテスト用紙を見てみたら…、これって昨日勉強させられたところだ!
しかも、ほとんどの問題がわかる!これならいい点とれるかも!?
つい、昨日無理やり勉強させられたのが役にたつなんて!思ってしまった。
放課後、いつもとは違う道を通った。
まだ朝の交通事故の影響が残っていたからだ。念のため、朝、通った道を歩いていた。
そうしたら、また道にゴミが落ちていた。仕方ないので、拾って近くの公園のゴミ箱に捨てた。
「偉いねえ、ゴミを拾うなんて」
振り向くと、おじいさんがニコニコ顔で立っていた。
「朝、ペットボトルを捨てていたヤツがおってな、そいつはさっき見かけたから、説教しといたんじゃ」
ああ!あのポイ捨てサラリーマン!
「君は朝も、ポイ捨てされたペットボトルをちゃんと拾って捨ててくれた。神様は見といてくれるから、これからきっといい事があるよ」
おじいさんの言葉に、私は笑顔で「ありがとうございます」と返した。
七回アンラッキーな事があったけど、よく考えたらもうすでに同じくらい、いい事があったんだよね。
終わり
災い転じて、実はラッキー!? 嶋月聖夏 @simazuki
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