不幸自慢オーディション

サクラ堂本舗いまい あり 猫部(ΦωΦ)

薄幸戦隊アンラッキー7

A氏は悩んでいた。


いつもは自由な発想で大当たりの企画を連発していた。

だが今回だけは違った。


次回作のモチーフは「不幸な人」と決まった。

A氏の担当する番組は少年たち向けの戦隊ヒーローものなのだ。

戦隊ヒーローと不幸は真逆にしか思えない。


ましてや、不幸をウリにした奴が戦隊を組んでも

ネクラで戦えないイメージしかなくて活躍するとは思えない。

ヒーローに値すると思ってないからだ。


方向性が定まらない時に同僚のSがやってきた。


「Aちゃん今回の企画のコンセプト、アレで大丈夫なのかい?」


「アレで戦隊ものを制作しろとさ。」

「不幸で戦隊もの?」

「既存のヒーローじゃないヒーローを誕生させろってさ…」

「しっかしまぁ酷い企画もあったもんだよなぁ。」

「そりゃそうなんだが、仕方ないんだよ。」

「一体誰からの企画だい?」


A氏は人差し指を天に向けて指さした。


「上?社長か?」

「違う、その息子だ!」

「たった10歳の子供の思い付きで企画が決まるのか?」

「そういう会社だよ。」

「お前それでいいのかよ?」

「いや、気に食わないけど仕方ないじゃないか!

だから、少し企画の内容を変えることにした。」


「戦闘ものをどうやって変えるんだよ。」


「不幸な奴を公募してさ、誰が一番不幸なのか決めるのさ。

最終的に不幸トップ7人が戦闘ヒーローものの隊員になる

オーディション番組に変更した。」


「おいおい、そんな内容でいいのか?」

「かまやしないよ。最後にはちゃんと戦隊ヒーローが出来上がるんだからな。」


無事にこの妙ちくりんな企画はすぐにOKとなり、

参加者を募集したら何故か大人気で参加希望者が千人を超えた。


スタッフは会場に集まった参加者に今回の最終選考について説明を始めた。

不幸自慢をして頂き得票数トップ7人は戦隊ヒーローとして

100万円が与えられます。


A氏は叫んだ。「ダメだーっ!100万円の賞品で不幸じゃなくなるっ!」

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不幸自慢オーディション サクラ堂本舗いまい あり 猫部(ΦωΦ) @hinaiori

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