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小百合が傍らに置いた大ぶりのトートバック(私が持っているような木綿の地味なやつじゃなくて、きらきらの飾りがついたブランドショップのショーウィンドウに並んでいそうなやつ)からひらり、と一枚のチラシを取り出した。テーブル越しに渡されたA4サイズのその紙切れを、わたしはまじまじと見つめた。
「ミス・キャンパスコンテスト」
声に出して読み上げてみる。
「自薦、他薦問いません。ぜひ応募して、あなたの魅力を最大限にアピールしてください」
つるりとした紙面には、ポップな文字が踊っているが、レイアウトがどことなくダサい。町内会の子供祭りを彷彿とさせるデザインである。わたしは戸惑いながら小百合を見つめた。
「小百合、わたしのことすごく好きでいてくれたんだね…。でも、いくらひいき目で見たってさすがにわたしがミスキャンパスになんて」
困惑しながらも嬉しさを滲ませながら言いかけたのを小百合がちゃうちゃう、とブンブンと手を振って遮った。
「こっち」
「こっち?」
つつつ、と動く白い指先につられるようにして紙面の下に視線を流す。
「企画、運営のお手伝いをしてくれるボランティアの方も随時募集中」
ね?と小百合が目線で頷く。
「ちなみにわたしが出るとかでもないからね。文学部の友達に、手伝いたい子がいたら声かけてって言われて丁度人探してたんだ」
あー、なるほど。
「十一月祭のメインイベントの一つになるみたいだから、やりがいはあるんじゃない?みんなで協力して何かを作り上げるって、まさに青春って感じでしょ」
形のいい唇の両端を持ち上げて、小百合がにこりと笑った。
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