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「つまり、明け方までだらだら漫画読んどって、そのまま寝落ちして起きたらもう夜で、一人ぼっちで暗い中起きて心細かったって、まあそういう話やないか、なあ」
そう、そういう話、と頷きながらも、わたしはもう既にこの話を持ち出してしまったことを後悔し始めていた。一人暮らしなんて、孤独と惰性との戦いである。たまに寂しくなってしまったとしてもそんなものぐっと飲みこんで朝を待てばいいのに、たまにどうしても今日みたいに暗い中一人で起きたらお腹の底がシン、と冷たくなってしまう。だから、東大路通りを突っ切って、狭い通りに面した玲人君の部屋の窓から明るい光が漏れているのを見た時、わたしの心の中はまるで迷子になりかけた船の船員が明るく光る灯台の灯りを見つけたみたいに、ふっと温かくなって気が緩んでしまったのだ。
「大体お前らはな、すぐに人生の解像度だとかうまいこと言ったつもりになってんのかも知れんけどな、こんなとこで」
こんなとこ、の言葉と同時に剣崎が手に持った箸でぐるりと円を描くようにして部屋の中を指し示す。素っ気ないグレーと黒の家具で統一された七畳ほどの部屋に、五人の大学生。
「こんなしょうもない奴らとたむろってる時点でお前らもう人生詰んでんぞ」
ルーザーやな、ルーザー、と何故か嬉しそうに鍋の中からくずきりをつるつると手繰り寄せる剣崎を見てわたしは肩を落とした。横から見ていた玲人君が端正な顔を歪ませる。
「しょうもないの筆頭であるお前が言うなよ。いやなら出てけ」
そもそもここすずめ荘の一〇三号室は正式には玲人君の部屋である。余りに入り浸りすぎてつい忘れそうになるけれど、その事実は肝に銘じておかなければならない。
「アホお前、俺らがおらんかったらお前なんかこの狭い部屋の中で一人で寂しく勉強ばっかしてることになるんやぞ」
「ええやんかそれで。むしろそれが大学生のあるべき姿だろうが」
「お前はそんなんやからモテへんのじゃ、このイケメンの無駄遣いが!」
「お前ほんまに今すぐ出て行け!」
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