第23話 成長と課題、予定外の初対面、そして“心”からの感謝



<レベルアップ! ――Lv.5→Lv.6になりました。 詳細:HP+2 筋力+1 器用+1 容量+1(ガチャ師 +1→+3)>


<【索敵】レベルアップ! ――Lv.1→Lv.2になりました>



 おっ、レベルが上がった。

 中々にタフな戦いだったので、まあそうだろうと納得の成長だ。



[ステータス]



●能力値

Lv.5→Lv.6

HP:15/22→17/24

MP:11/34


筋力:21→22

耐久:6(装備+5)(【身体硬化】+20)

魔力:6

魔法耐久:3

器用:9→10

敏捷:12 



容量キャパシティー34/34(③[●●●●●●]+④[●○○○○○]→41/46)

容量キャパシティー34/37(③[●●●●●●]+④[●○○○○○]→41/49)



●スキル

【異世界ガチャLv.2】

【身体強化Lv.2】

【MP上昇Lv.3】

【索敵Lv.2】

【時間魔法Lv.1】

【操作魔法Lv.2】

【セカンドジョブ】

【状態異常耐性Lv.10】

【剣術Lv.1】

【身体硬化Lv.1】(New!)



保有Isekai:2470



「うぉっ、【身体硬化】エグっ」



 俺の素の耐久よりも3倍以上は上がってる。

 そりゃ硬かったわけだ。

 

 だがこれで、また戦術の幅が広がった。

【スキル盗賊団バンディット】も、欲しいスキルを奪うという積極的な使い方以外に。

 相手を弱体化させるという使い方もできるということだ。



「【索敵】もレベルアップか」


 極々簡単にだが、相手の行動予測を可能にするための大事なスキルだ。

 もっと距離や精度が上がってくれればより嬉しい。   

 


「あ゛ぁ~疲れた。ちょっと休憩」



 道路上であることも構わず、ドサッとその場に座り込む。


 HPはともかく、MPが意外に消耗していた。

【時間魔法】を使っても倒れ込まなくなったとはいえ、やはりまだまだMPが欲しい。   


 快勝ではあるものの、課題も見つかった戦闘だった。



「ご主人様、お怪我はございませんか?」


「いやぁ~、うん、大丈夫。ただちょーっと疲れただけ」

   


 駆けてきてくれたソルアに軽く手を振って、無事であることを伝える。

 ホッと安堵してくれるのを見ると、改めて今回の戦闘について、頑張ってよかったと思えた。



「そうですか……お疲れさまでした。周囲の警戒はしておきますので、少しだけでもお休みください」



 そう言うとサッと後ろを向いて、ソルアはこちらに背を向ける。


 ……うわっ、ちょっ、ソルアさん。


 俺、座ってますよ? 

 下から見上げる形になってますけど?


 だからさ、もう少し離れてくれないと。


 あなたのとても短いスカートの中、見えちゃいますよ?


 

 ……まさか久代くしろさんに続き、ソルアのお尻と太ももまでこんな間近で見ることになるとは。


 

「あー。うん。もう大丈夫」



 俺が立つか、違う方向を向けばいいだけでしたね、はい。 


 ……凄くありがたい休憩にはなったけどさ。

 もうちょっとソルアさん、警戒感を持った方がよろしいことよ。



≪ご主人、お疲れ! ねぇねぇ、ボクの頑張りどうだった!?≫



 っす、ファム、お疲れさん。

 バッチリだったぞ。


【索敵】も良い味出してくれてたが、やっぱりファムとの感覚共有があってこその予測だった。



≪本当? わーい、やったぁ! ご主人に褒められた!≫



 元気一杯に宙を飛び回る姿は、疲れを知らない無邪気な子供の様だ。

 ……凄いな、ファムにも結構動き回ってもらったと思うのに。


 疲労困憊ひろうこんぱいの俺と、ファムとの違いは何だろう。

 不思議で仕方ない。


 ……これが歳をとるということなのだろうか? 

 


「――あれ? えっ、これ……えっ?」


「あなた達は……」



 そうして加齢の恐ろしさに想像力を働かせていると、不意に第三者の声が聞こえた。

 聞き覚えがある声が二つ。

  


 ――あっ、来宮きのみやさんと久代くしろさんだ。



□◆□◆ ◇■◇■  ■◇■◇ ◆□◆□



 ぎゃぁぁぁぁ。

 会う予定なかったのにぃぃぃ!



「戦闘音が聞こえてきたんだけど――わわっ! 凄い綺麗な女の子……」


「……本当ね」



 どうやら二人がいた場所からも、戦っていたのが聞こえていたらしい。

 ……まああの筋肉ゴリラ、空ぶって道路を滅茶苦茶に殴ってたからな。  


 そして恐る恐る様子を見に来て。

 一番に目に飛び込んできたのは、絶世の美少女ソルアさんだった、と。


 同性にも通じる容姿の凄さ、流石ですソルアさん。

 



「あっ、あの方たちが例の生存者さんですか? わぁ~。綺麗なお二方ですねぇ」



 ソルアもソルアで、久代さんたちの姿を目にするのはこれが初めてで。

 お互いにその美女・美少女っぷりに驚くという、何とも言い辛い初対面となった。



 ……ちなみに俺は蚊帳かやの外ですが何か?



「――って、そうじゃなくて! 明らかに戦闘した跡がある。ここで大きな戦いがあったのは間違いないはずなんだけれど」



 まず我に返って本題に戻ったのは久代さんだった。

 そしてそれに引っ張られるようにして、高校生の来宮さんもハッとなる。 

 

 

「あっ! そちらの方々が、何かご存じなら――」  



 フッ、だが慌てる時間じゃない、大丈夫。


 ここで【異世界ゲーム】特有のシステムが生きてくる。

 倒されたモンスターの死体は残らず、光の粒子となって消滅するのだ。


 だから、俺たちが知らぬ存ぜぬで通せば、ここから先はもう何もイベントは起こらない。


 後はお互いの生存を喜び合い。

 でも結局は赤の他人だよねと、別れれば終わり――



「…………」



 ん? 

 女子高生の美少女が、熱い眼差しで俺を見つめてくる。

 


 ……何?



「…………」



 あっ、プイッとソルアの方に視線を変えちゃった。

 ……俺も見つめ返したのがキモかったとか?



「えっ――っ!」



 なんてどうでもいいことを考えていたら、状況が一変する。

 ソルアを見ていた来宮さんの表情が、いきなり真っ青になったのだ。



「あぁっ、あぁぁ……」


「えっ!? ど、どうしたの来宮きのみやさん! 何が、何を見たの!?」



 クールなイメージの久代さんが、来宮さんの異変に動揺していた。

 そこまで来て、そして今の“何を見たの!?”というセリフを聞いて、ようやく事態を理解した。



 ――そうだ、【読心術テレパス】かっ!



「あのっ、えっと、ご主人様?」



 こちらのソルアも、何が起こっているのかわからず困惑した様子。

 ……多分、ソルアの心を読んでしまったのだろう。

 

 その中に、さっきのホブゴブリンそのものや戦闘シーンでもあったのか。 



透子とうこ、さん。私たちもしかしたら、とても危ない状況、だったのかもしれません」



 あまりの恐怖に震えるような声。

 来宮さんは久代さんに答えながらも、腰が抜けたようにペタンと地面に座り込んでしまう。

 

 

「……あなたは、あんな恐ろしいモンスターを相手に、立ち向かって。あんなおぞましい目を向けられても、屈しない、凄い」 



 うわ言のような。

 あるいは現在進行形で心の映像を見て、感想をただ口にしているだけのような。

    

 そんな我を忘れたような感じで、来宮さんはずっとソルアへと視線を固定し続けていたのだった。



□◆□◆ ◇■◇■  ■◇■◇ ◆□◆□



「……そう。つまり彼らが、知らない間に私たちを助けてくれたってことかしら?」


「はい」



 来宮さんはあまり時間をかけず持ち直した。

 元は芯のある強い少女なのだろう。


 そして久代さんにも、彼女を介して知られてしまった。



「…………」



 まさか“心”から、この場で起きた証拠を見つけ出されるとは。 

 これがミステリ小説だったら、“こんなトリック、話はミステリとは言わない!”って★1評価の嵐が来るわ。

 

 いや、別に悪いことしたわけじゃないんだけども。

 なんかこう、バツが悪いよね。



「私も、じゃあ、モンスターのなぐさみ物になるところを、あなた達に救ってもらったってことね」



 久代さんが前に出てくる。

 それは、来宮さんが見て伝えたことを、一片たりとも疑っていないという表情だった。



「ありがとう。えっと……――あっ! あなたが“あの滝深たきみ君”だったのね? フフッ」  



 えっ?

 あれっ、俺名乗ってない……あっ!


【鑑定】された!?



 ――いや、それでも“あの”という言葉が出てくる理由にはなってないぞ!?


 

 嘘ッ。

 こっちが一方的に知ってるだけと思ってた、あの“久代透子”に実は認識されてた?


 うわぁ、えっ、でも何で――



「――おーい、久代さぁーん!!」


「きっ、来宮さん、どこ!? お、俺から離れたら、ダメだよ!」



 あっ……。


 男二人の声が聞こえたのと同時に、俺は踵を返し始めていた。


 ちゃらそうな学生と、土田つちだ君だっけ?

 あの二人ねぇ~。

 ……うん、彼らと会って話すよりは、もう帰って休みたい。


 ソルアもそれにならい、二人へと背中を向けた。



「ちょっ、ちょっと待ってください――」


「えっ!? あっ、何で――」



 来宮さんたちの引き留める声がするも、残念だがここらでさようならだ。

 

  

「っ! ――私たち“北東の方にある百均”を拠点にしてます!」


「あっ――うん! 滝深君も、綺麗なあなたも。来てくれたら、必ずお礼、するから!」



 引き留められないと察してか、二人から背中に言葉がかけられた。

 それを受けての修正ではないが、ファムを呼んで一つ頼みごとをする。


 ……いや。

 “お礼”の後に“意味深”って言葉が付きそう、なんて全く想像してないから、これっぽっちも、うん。



 ――またさっきみたいに、行けるところまででいいから。尾行することって、できるか? 

 


≪えっ? うん、できる、けど……≫



 歯切れが悪いな。

 さては……要求は何だ?



≪良いの!? うーんとねぇ、帰ったらまたご主人に魔力を注いで欲しいな! ボク、ご主人に熱い魔力入れてもらうこと、凄く好きだから!≫



 それくらいお安い御用だけど、だから言い方!

 凄くエッチなおねだりをされてるみたいに聞こえるから止めて!

 


 ファムが願いを聞き入れられ、嬉しそうに飛び立ったのを確認。

 俺たちは改めてアパートへの帰り道についたのだった。



 

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