第20話 ★4確定ガチャ、魔力注入、そして共有して見た新たな光景



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①~生存ログインボーナス 2日目~

1:★4確定ガチャ券


2:星絆スターズ・リンクス



※受取り可能


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「おっ、“受取り可能”になってる」



【異世界ガチャ】の生存ログインボーナス2日目分。

 確かに、時間を見てみたら9時を超えていた。



「へぇぇ~。こんな感じなんだ」



 受取りを選択すると、“★5確定ガチャ券”の時と同じように実物が具現化される。

 

“★4確定ガチャ券”はほぼ見た目も同じ。

 ただ縁の色が金色だった。

 ガチャの結晶の色と合わせているのだろう。



星絆スターズ・リンクスは……見た感じはただの石ころだな」



 でも“星”という言葉がつくように、所々に光る砂粒ようなものがついている。

 何も知らされないで見たら、綺麗な宝石か何かだと思うだろう。

 


 これを使えば、★1が★2に。

 ★3は★4に。


 そして★4は★5へと成長できるらしい。



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星絆スターズ・リンクス


 アイテム。

 具現化前の結晶に使用することで、★の数を一つ増やすことができる。

 ★4以下の結晶にのみ使用可能。



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「でも“具現化前の結晶”ってことは、“★4確定ガチャ券”のままじゃダメってことか」



 つまりガチャ券を使って、ガチャから結晶を得ないと星絆は使えない。



「ならまずはガチャ引くか」



 星絆を何に使うにしても、“★4確定ガチャ券”は使っておいて問題ない。

 ガチャから出た物を見て、どうするか決めればいいのだ。



「よいしょっと――」



【異世界ガチャ】でガチャを出現させる。 

 毎度お馴染みの大きな麻袋、アイテムボックス・マジックバッグだ。

 


“★4確定ガチャ券”が吸い込まれていくように消えると、ガチャが始まった。



「さて、何が出るか……」



 ドラッグストアの【施設】や【スキル盗賊団バンディット】のおかげで、スキルについては充実してきた。


 今欲しいのはやっぱり人手か。

 

 それは12時以降のイベントとして……。 




「装備かジョブかな……」



 やっぱり命あっての物種なので、身を守るのに手っ取り早いのは伝説の装備とかが出てくれることだ。

 

 それか凄いジョブ。

 ……勇者とか魔王は流石に★5かな?



「おっ、来るぞ――」



 麻袋の口元のひもが緩み、金色に光った結晶が飛び出してきた。

 うん、ちゃんと★4だ。


 ……ってか何気に金色、★4って初めてか。




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ガチャ結果


魔導人形マジックドール(妖精型) アイテム ★★★★


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 おっ、アイテムか。

 ちょっぴり予想外だった。


 まあ★4だから、何が来てくれてもありがたいことに違いはないが。



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魔導人形マジックドール(妖精型) ★4


 アイテム。

 高度な魔法工学が発達した、魔法都市製の魔導人形。

 

 所有者の魔力を注入することで起動し、様々な方法でサポートしてくれる。

 妖精型はサポートに特化しており、所有者の魔力の性質によって覚える機能が増えていく。


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「へぇ~。おっ、良いじゃん」



 サポートアイテムか。

 丁度人手がもっと欲しいと思っていた所だ。


 ただ妖精型でしかもサポートに特化ということだから、戦闘を大体任せられるという感じではないんだろう。

 やっぱりイベントはイベントで、ちゃんと狙った方がよさそうか。



「……星絆スターズ・リンクスは、使わなくても大丈夫かな」



 説明を読む限り、★5にする必要性は感じなかった。

 早速、具現化させることにする。


 結晶を砕くと、そこからまばゆい金色の光が溢れ出す。

 しばらくすると光は一点に集まり、具体的な人の形を成していった。



「おぉぉっ!」    


「まぁっ!」



 口を挟まず傍で見守っていたソルアも、思わず声を上げる。

 具現化された人形は、とても可愛らしい見た目をしていた。



□◆□◆ ◇■◇■  ■◇■◇ ◆□◆□



「…………」


 

 起動前だからか。

 人形はまるで深い眠りについているように、安らかな表情で目を閉じている。

  

 妖精というだけあってとても小さく可憐かれんで、強く触れると壊れてしまうのではないかと思うくらい細身だった。



「うわぁ~! 凄い、妖精族そのままですね!」


 

 ソルアは妖精を見たことがあるらしい反応だ。

 俺はもちろんないが、でも、イメージしていたのとそこまで違わなかった。


 15㎝かそれくらいの大きさ。 

 半透明の綺麗な羽を持ち、そこから水色の長い髪が透けて見えている。



「で、魔力を入れれば起動するらしいが……」



 つまりMPってことかな?

 とりあえず【操作魔法】の要領で魔力を纏わせてみた。


 ……うわっ、結構吸われた。


【時間魔法】1発分くらいの疲労感だ。

 


「――」



 あっ!

 目が開いた!



 ……と思った次の瞬間には、人形は動き出していた。



 羽が動き、フワリと宙へ舞う。

 肩がむき出しのワンピースを風になびかせ、人形は喜びを表現するように飛行した。


 そして空中で静止すると、こちらを向いてニコッと笑った。



≪――ボクを起こしてくれてありがとう! アナタがボクのご主人だよね? ボクはファム。よろしくね!≫



 ぬぉっ!?

 こ奴っ、ボクっだと!?

 

 さらに脳に直接語り掛けてくるタイプか!  



「動き出しました! 凄い凄い!」



 隣ではソルアが、ただ動いたことにだけ感動と興奮を示していた。

 ……ソルアには聞こえてないのか。


 

 つまりこの魔導人形マジックドール、ファムとの会話は脳内ですればいいのかな?


 えーっと……よろしく、ファム。



≪うん! これからどんどんご主人とお姉さんをサポートしていくよ! ……でも、ボク、起きたてだから、まだ何もできなくて≫



 そこでファムの天真爛漫てんしんらんまんな笑顔が曇る。

 感情に連動するかのように、頭頂部についていたアホ毛がショボーンと折れていく。

 

 ……コイツ、可愛いな。



「ご、ご主人様……妖精さんが落ち込んでませんか? ど、どうしましょう、起きて直ぐだからお腹が空いて――あっ! 飴を食べてもらうのはどうでしょう!」   



 ソルアは今の会話が聞こえていないので、珍しくあたふたしていてこれも可愛かった。

 そして名案を思い付いたというように、ついさっき軽い事件のきっかけとなった物を持ち出してくる。


 ……いや、やめとけって。


 

 飴って2,3㎝くらいはあるんだろ?

 15㎝かそこらの妖精さんにそれ食わすって、何気にドS発言じゃね?


 人で言ったらフードファイターが食うデカ盛りレベルだから。



「いや、魔力――MPが足りないらしい。MPを注いでやれば多分、大丈夫」



 ソルアへの説明が、ファムへの受け答えにもなっていた。



≪うん! ボクはご主人の魔力でできることが増えていくんだ。だからご主人、ボクに沢山沢山、熱い魔力注いでね!≫


 

 言い方!

 ソルアが聞こえてないからいいものの、誤解を生むワードチョイスはやめて欲しい。



「そうだったんですか? では、パソコン教室に向かいますか?」



 ソルアの言いたいことは直ぐにわかった。

 どれだけ必要かはわからないが、あそこならMPバッテリーがある。



 MP切れになる心配をせずファムに付き合えるだろう。



「ああ。そうだな。じゃあ準備して行こうか」



 ファムの機能追加を主目的に、再び外へと出かけたのだった。




□◆□◆ ◇■◇■  ■◇■◇ ◆□◆□



[①MPバッテリー(小):0/60 MAX充電まで残り6:12……]  

 

[②MPバッテリー(小):40/60 MAX充電まで残り23:56……] 



MP:34/34



 よし。

 準備OKだ。



≪そう? じゃあ、早速お願いします!≫


 

 ファムは隠れていたズボンのポケットから飛び出す。

      

 俺のポケットが気に入ったらしい。

【異世界ゲーム】の世界で良かったな。

 

 平時だと美少女人形をポケットに突っ込んでるヤバい奴だからな、職質待ったなしだったぜ。


 

[魔導人形ファム 追加機能の候補一覧]

 

①視覚共有……10MP ※【索敵】から要素獲得


②聴覚共有……10MP ※【索敵】から要素獲得


③付与魔法……30MP ※【身体強化】+【○○魔法】から要素獲得


④MP上昇 ……10MP ※【MP上昇】から要素獲得


⑤回復魔法……30MP ※【状態異常耐性】+【○○魔法】から要素獲得


異空間室ディメンションスペース……100MP ※【時間魔法】+【セカンドジョブ】+【操作魔法】から要素獲得

【セカンドジョブ】と【操作魔法】の要素により【時間】要素を変質……隣接概念【空間】へと変質成功




「結構あるんだな……」



 目の前に表示された画面の意外な多さに、思わず驚く。

  

『所有者の魔力の性質によって覚える機能が増えていく』との説明文通り。

 ファムができるようになることは、俺の持っているスキルに影響されるようだ。



「⑥とか、凄い興味あるけど……」



 100MPはやりたくても今は無理だ。

 累積だったとしても、である。

 MPバッテリーの残量を含めても足りない。



 現実的な機能へと思考を移す。



「①と②でいいか……」



 10MPだから③も併せていけそうだが、一気に全部やると残りMPが4になる。

 MP切れには注意したいので、ひとまずこの二つを追加してあげることにした。



≪分かった! ――……じゃあ、その、ご主人。初めてだから、優しくしてね?≫



 明るく元気な様子がいきなり引っ込み。

 ファムは照れや羞恥が混じったほんのり赤い顔、そして上目遣いに。



 ――だから言葉のチョイス!



≪んしょっと――ど、どうぞ!≫



 “どうぞ”って……。

 ファムは恐る恐る、俺の人差し指にしがみつくようにして止まったのだ。

 

 妖精のミニマムボディーにはちょうどいい長さなのか知らんが。

 


 ――俺の人差し指、妖精にだいしゅきホールドされてんだけど!



 そして指の腹辺りにフニっと当たっている、この二つの膨らみは……。



「…………」 

     


 ソルアさん、凄い微妙な顔してる!?

 いや、これ単なる魔力の注入だから! 


 ファムが謎に誤解を生みそうな体勢取ってるだけで、俺に変な意図は一切ないからね!?



 このヤバい空気を何とかするべく、早々に注入を終わらせることにする。



≪んあっ、あっ、ご主人がっ! ご主人の、熱いのがぁ、入って……っ!≫



 ――だからどうしてそんな狙ったようなことばっかり言うの!?



 お前はソルアか!



「…………」



 チラとそのご本人さんを見ると、意外にも表情の硬さはなくなっていた。

 ……その代わり、なんかソルアさんもモジモジと恥ずかしそうな、何とも言えない顔をされてました。


 ファムの余裕のなさそうな、でもどこか気持ちがよさそうな表情にでも当てられたのか。


  

 ……早く終わらせよう。




≪ふぅぅ、ふぅぅ……――ありがとう、ご主人。おかげでボク、ようやくご主人たちのお役に立てるよ!≫


<魔導人形ファムの機能が追加されました。 詳細:①視覚共有 ②聴覚共有>



 通知が来たことで、注入が成功したことを確信する。

 

 ファムは直ぐに元気な明るい様子に戻り、瞬く間に外へと飛び出していった。


 あっ、お前、どこに――



<ご主人、早速ボクの力、試してみて! 外の景色、ご主人にも見せるから>



 あぁ、そういうことか。

 それなら、まあ。


 

 言われた通り、両方の機能を使ってみることにした。

 

 念じると、脳に一瞬鋭い痛みが走る。

 だが直ぐにそれは引いていき、次の時にはファムと感覚が繋がったのがわかった。



「あっ――」


 

 今、パソコン教室にいるのに。

 その室内以外の光景が目に映った。


 外、俺たちがここに来るまでに通った道だ。

 丁度ドローンが低空を飛行するように、荒れ果てた道路が見えている。



 目は実際に目の前にある部屋を見ているのに、それ以外の映像が認識できている。

 とても不思議な感覚だった。



<? ――あっ、ご主人っ、人がいたよ!>



 離れていてもファムとの会話はできるようで、そんな言葉が頭に響いてきた。

 

 実際の目から入る情報。

 共有したことで得られるようになった映像や外の喧騒。

 そしてファムとの会話。


 全てが同時並行で頭の中に流れ込んでくるので、情報処理が追い付かないかのような頭痛が再び訪れた。



『――だ、大丈夫だった? 来宮きのみやさん』  

  

『……うん。ありがとう、土田つちだ君。おかげでまたケガ無くモンスターを倒せたね』



 そしてファムが言った通り、更に新たな視覚・聴覚情報が流れ込んでくる。

 ファムが実際に見て、聞いている情報だ。


 まず、学校の制服姿をした男女がいた。



『ふぅぅ……疲れた』


『でも昨日に比べたら大きな成長だよ。流石は久代くしろさん、ミスキャンパスは伊達じゃないね』



 そして私服姿の男女もいる。



 4人分の別々な人の姿。

 そして4人分の別々な男女の声。


 

 それは4人組、新たな生存者の発見だった。

    

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