第53話

ぬめぬめな2人な抱きついた地獄から数分。

いい加減この状態を何とかしなければ、とついに重い腰を上げた。

「ねえ、なんか近くに体とか洗えるところないの?」

「あー、ないっすねー」

あらヤダバッサリ、クソッタレ…!

「そんなものはないですけど、ちょっと行った先に私の家があるのでそこで」

「ほう…?それはどっちの家なの?」

「どっち?と言われますと?」

「いや、その、ね?」

「はぁ…?」

「今の人型用のなのか、ドラゴンの時のなのかなって」

「あー、そういうことですか。どっちもいけますよ?」

「あー、そういうことですか。ってなるわけないだろがっ!」

「まあいいから行きましょうよ、いい加減気持ち悪いです…このベタベタは」

「誰のせいだと思っ…誰の体液だと思ってるの?」

誰のせいだと言い切りたかったがその言い方をするとこちらにも非がやってきてしまう。

(何せ死んだのはあたしだし)

「じゃあちょっと行きましょう!」

「ちょっとってどのくらい?5分とか?」

「え?あー……」

「え?10分とか?」

「いやー…その…」

「まあ30分とかなの?そこまでならギリちょっとだよね〜歩いて行けるんでしょ?」

「いや、その。今の状態で歩いていくと3週間…とかですかねぇ…ははっ」

「ほへー3週間かぁ…まあちょっとだよね」

「えぇ、ちょっとですよねぇ」

とてもじゃないけど疲れて突っ込む気力はどこかへ飛んで行ってしまった。




3週間かぁ…うーん。無理!

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