たった1つの冴えた撃ち方

イルスバアン

運試しの古典的デスゲーム



集められた15人は、死に装束のスーツを着ていた。

その先頭にいる仮面の審判が席に案内する。


床と固定された椅子に座ると脚と胸が拘束される。

丸い回転式テーブルの上にはリボルバー式銃が1丁。

装弾数は7発だが、今は空。



抽選で選ばれた男が、弾を一つこめてシャッフルし隣の女へ手渡した。

女がそれをこめかみに当てて引き金を引く。運よく助かった。すると彼女も弾を一発こめると、審判がシャッフルして次の人に回す。



そう、ロシアンルーレットだ。


ルールは「最後の一人になれば勝利」。



ただし参加者は各自、弾を1発ずつ支給されている。

それらを自分の手元に銃があるうちは好きなタイミングで入れられるのが、特殊ルール。


周囲のカメラの向こうには観客。

出場者はゲームに勝利すれば、どんな願いを叶えられるという条件で、この危険への参加を承認した。


次の男も運よく助かり銃を降ろすと、弾を込めた。


この時点で弾が当たる確率は3/7。

そして次の女は運悪くハズレを引いた。

審判が落ちた拳銃を拾い、次の相手に渡す。


死んだ者が弾を持っていた場合、最後に弾をこめた人間のものとなるルール。

つまり、撃たれたくなければ、人数が多くて自分の番が回ってこないうちにさっさと弾をこめろということだ。

人数が多いうちはどんどん弾が込められるが、少なくなると自分の当たる確率をあげるかもと出し渋る者が増える。


何にせよ、順番は淡々と周り、一巡する中で誰かが死ぬ。




バン、バンと銃声が響く。

緊張で手を震わせ深呼吸する者。逆に嫌な時間が長引かぬようすぐに撃つ者。あまりに時間がかかると審判が近づき、あっという間に銃を奪うと代わりに撃つ。

違いはあれど、ハズレを引いた途端に即死するのは皆同じ。



1巡目、運よく助かった私はあえて弾を込めなかった。

戦略的と言えればいいが、実際は自分のこめた弾で誰かが死ぬことへの嫌悪感のせいだ。

2巡、3巡して、残りは8人。今銃には弾が3発。



カチッ



銃を引き助かった後、男は銃に弾をこめる。

この時点で銃には5発。



カチッ



隣で空砲の音。弾を込める音。

そう、次に私は6/7を回さねばならない。


仮にここで助かれば、弾をこめて横の人に渡すと必ず相手を殺せるが、再び生き残る自信はない。

そもそも参加者の半数が死んだ中でまだ生きてるのだから、かなり運がいいほうだ。

1/15になるために、この6/7を乗り越え、次7分のいくつの挑戦をする?

確率が頭の中で渦巻き、脳がおかしくなる。何よりこの緊張感に耐えられない。

死んでも叶えたい願いがあったのに、今は早く死にたがってすらいる。

終われるものなら、この一発で人生を終わったほうが幸せだ。


私は救いを求めて引き金を引いた。



カチッ




死ねたか。





……違う、生きている。


そう頭に浮かんだとき、世界が変わって見えた。

生死を懸けたバトルで、自分の感覚がひっくり返された。

私は弾を銃にこめる。

横の人間は死を悟って逃げようとするが、地面に固定された椅子では不可能だ。



……でも、もうこの緊張感は嫌だな。




ふと、全てを終わらせる思い付きをした。

私は7発入った弾の持ち手を握り、まず隣の人間を撃ち抜いた。

驚く間に、残りの人間も次々に撃っていく。参加者は椅子に縛られているので狙いやすかった。







―――私以外が死んだあと、審判に話しかける。


「ゲームの目的は『最後の一人になれ』。つまり私は勝利者だ。それとも、ルール違反と判断されて失格者か? なら、先に願いを叶えてくれ。私の願いは『このゲームでルール違反はなかったことにする』って」


これがルール違反であり死ぬのなら、それでもいい。

私は精一杯頑張ったのだから。


運がなく自らを撃ち抜いた7人は、即死だった。

運があっても、私に撃ち抜かれた7人は、絶望の中で死んでいった。

彼らに比べれば、私は幸運というものだ。


なにより、0/7というのが、素晴らしい。

銃からすれば不幸だが……もうその引き金が動かされることはないのだから。



そうしてパチンと、私の椅子の枷が外れたのだった。






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