私はアンインストールされた

新吉

第1話

 私はアンインストールされた。ダウンロードされインストールされて、さあこれからってときにアンインストールされた。私はラッキーセブンというアプリだ。幸運は何度も続かない。ラッキーセブンは時々来るから幸運なんだ。いつしか私はアンラッキーセブンというあだ名で呼ばれた。



 さすがアンラッキー製造器!

 このアプリ入れてからコーヒーもパチンコも競馬も全部ラッキー。当たりが小さい。店に入れば7777人目のお客様。おまけや当たりと名のつくものが向こうからやってくる。いったいどういう仕組みになっているのか恐い。結構ですと即答してしまう。毎日楽しめなくなった。アンインストールして正解。


 ねぇアンラッキーじゃん

 なんで仕事とか彼氏とのラッキーはないの。ショボいのばっかり。そりゃ大当たりアプリじゃないけどさ、彼氏にフラれたんだけど。



 私はアプリの開発者から、日々のささやかなラッキーを7倍に、という願いから生まれた。赤いと3倍早くて、このアプリを入れたら7倍やばい。開発者はいなくなってしまって、それから私はいろんな会社を渡り歩いて今のムヨクカ製作所に拾われた。改良を加えられ毎日がラッキーになるようにパワーアップした。


 力が強くなったけどラッキーは小さい。毎日小さな当たりが続くのはストレスになってしまうようだ。私は自分が消えることを願った。無力になりたい。いなくなりたい。アンインストールされたい、いやその前に私そのものを誰か消して。


 所長が私に聞いた。

「生まれ変わるなら何になりたい?」


 もしも他の何かになれるなら、

 私、缶コーヒーになりたいです。心のなかで願うと所長は大笑いしたあと理由を聞いてくれた。


 だってだいたいの人は喜んでくれるから


「ふふ」



 そして私は自販機にいる。アンラッキーセブンコーヒー120円。


「これ、なんでラッキーセブンじゃないんだろうな?」


「わりと美味い」


 うれしい。

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私はアンインストールされた 新吉 @bottiti

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