謎の多すぎる事件、皆さんはコレ解りますか?

葵卯一

第1話

事件が起こった、ベテランの刑事も解らない事だらけの難事件。


解決できるのは貴女だけ、ぜひ知識を総動員して挑戦してほしい。


あとギャク・ジョークばかりなのでストレスを感じてしまう方にはお許しを。


では、葵卯一の挑戦状、面白がっていただければ幸いです。


本文編集

 事件が起きた、その事件は真面目な敏腕刑事達も頭をひねり、刑事一課と呼ばれる殺人事件を扱う部署で、何十年も犯人を追って来たベテラン刑事達も今回ばかりは手を焼いていた。




「なんでこんな事になってるんだ?」


 刑事は使い古したよれよれのスーツから煙草を取りだした。


「先輩、ダメですよ」


「ああ解ってるって、咥えたけだ」




 煙草を咥えただけで注意を受けるご時世、全く嫌な世の中になった物だ。




 先輩刑事は面倒くさそうに煙草を箱に戻し、ガムを探すべく尻の辺りに手をまわす。


 ・・?[ジャケットの後の所の袖の切り込み]が開くほど両方のポケットを探すが、ガムの包装が見付からない。




「・・・チッ、ガムも品切れか、後でコンビニに寄るしか無ぇな」




 鑑識科が何十枚も撮った写真には被害者の哀れな姿が写り、現場とされた部屋は散らかり放題。


 事件の瞬間、被害者の男がどれだけ慌てていたのかも、一目で解る状態だ。




「あっもう片づいちゃってるんですね?良かった、オレ、死体とか血とか見たら[手首と腕の所のポコとした部分]が痒くなるんですよ・・って言うか匂いでもそうなっちゃうんですよね」




 若い刑事は死体も無いのに、気配を感じているのか[手首の所のぽことした部分]を少し掻く。


 [爪の付け根の所の白い部分]が多い、健康の証拠か若いさの表れか。




 四月一日は自分の爪を見る。 


 縦に線が入ったり[爪の付け根の所の白い部分]が無かったりする指だ。


(あぁ・・・病院に行く暇が欲しい)がそれはそうとして。




「ばかやろう、刑事がご遺体にアレルギーを持ってどうするんだ」


 遺体は証拠の固まりだ、死体を調べる事で死亡時間を割り出し・犯人を特定する手がかりになるんだぞ。




 被害者の名前は[四十谷 々]


 職業[本に付いている紐]を染める職人見習いらしい。


 


 部屋には[蛍光灯の紐]がぶら下がり、足元には[靴下をとめる小さな金属]を[ケーブルとかを束ねるナイロン製のバンド]がいくつも転がっていた。




(・・・コレの名前ってなんだっけか?)正式名称が浮かばない。


 四月一日の刑事の感は『この事件の鍵』がそこにある、そんな気がして仕方無い。




「・・・まぁいい、で、この被害者の右手に持っている[コレ]こいつはなんでこんな物を掴んで飛び出したんだ?」


 刑事の四月一日は写真の残る[カーテンを縛る帯みなたいなやつ]を眺め、首をひねる。


「余程苦しかったのでしょう、[カーテンを縛る帯みたいなヤツ]もそうですが、


 [引っ掛けるために壁に打ち付けてある所]が壊れて床に落ちてました」




 小鳥遊は白い手袋を手に、壊れた部品を拾い[入り口を閉める事の出来るビニール袋]に入れる。


 


「状況から見てもコレは殺人事件の可能性が高いな。


 見ろあの[金魚の形をした醤油の入っているやつ]アレに毒が入っていたんだ。




 被害者が苦しんで[寿司とか弁当に入っている緑のトゲトゲした薄いプラスチック]みたいなヤツが床に飛び散っているだろ」




 寿司同士をくっつかないようにする為の[緑の薄いヤツ]、残った寿司や[生姜の酢付け]が寂しく端の方に詰まれてあった。




「しかし・・・犯人の動機はなんだ?


 こんなとっ散らかった部屋でガイシャが金を持ってるとは思えんぞ?


 物取りが目的で無ければ・・・怨恨か?」




 四月一日は被害者の友人・交友関係を調べる為、机の引き出しを引く。


「な?!なんだコレは!」




 机の引き出しに集めてあった[チャックの摘まむ所]とくに金属の[摘まむ所]とか[ジュースの蓋を掛ける時に引っ掛ける金属]それを[ジュースにくっついたままの部分]をワザワザ千切って集めていた。




 缶の種類が違うのか金属の色が違ったり、チャックの方も何十種類も集めてある。


 それが引っ張った衝撃でガチャッと音を立てた。




「刑事、こっちの瓶には[パンの袋とかとめるプラスチックのコの字のヤツ]が大量に!一体こいつは・・・」




 猟奇殺人者が瓶に自分の爪を集めてラベル着けしているような不気味さ、被害者には何か恐ろしい秘密があるかも知れない!?




「オイ、近所に聞き込みだ!


 小鳥遊はここの大家をあたれ、隣近所もだ!こいつの行動範囲を虱潰しに洗うんだ!」




 四月一日の号令で刑事達は素早く動き出した。


 犯人は一体何を考え、被害者は一体何をしていたのか?謎は深まるばかりだった。




・・・・・・・・




「先輩!困った事になりました」


 最初に戻って来た小鳥遊は警察手帳を広げ、難しい表情で被害者が置かれていた場所を見下ろす。




「実はその・・・被害者はこの場所で息絶えた訳では無さそうなんです」


「なに?」




 それが本当ならガイシャは別の場所で毒殺され、この散らかった部屋に寝かされて発見された事になる。




(そうなると・・ガイシャの手に掴んでいる[カーテンを縛る帯みたいなヤツ]は犯人が引き千切り持たせた可能性も、、、しかし何故だ?)




「実はですね、このアパートの向かいに住むオバサンがこの部屋にガイシャ寝かせたと、証言がありまして」




「なに?


 と言う事は自白か?そのババアはもう逮捕したのか?


 いやその前に需要参考人として引っ張ったか?」




 人を殺して気が動転したのだろうか、逃げずに自白・・自首して来たなら事件は解決、動機はゆっくりと事情聴取で聞かせてもらえばいいだろう。




「それがですね・・何と言うか・・・オバサンの証言では、ガイシャが奇声を上げて慌てて窓から飛び降りて来たそうなんですよ。。。


 凄い勢いで走って来て、[ガードレールの端のU字になってる所に]引っ掛かって動か無くなった。


 そう言ってるんです」




「はぁ?そんなバカな!


 勝手に走って来て・勝手に引っ掛かって動かなくなっただと?そんなバカな話し・・・あるのか?」


 


 四月一日は窓を開き下を見た。


 一軒家の玄関が開きこちらを見上げる年嵩の婦人、その家の斜め向かいには[ガードレールの端のU字]




 パトカーのライトがガードレールに着けられた[丸い反射板に付いた風車みたいなヤツ]が現場を見ていたかのようにくるくる回っている。




「なるほど、あの端に男の衣服の繊維が残っていたんだな?」


[紅白で三角のつのみたいなヤツ]が現場を囲み、鑑識が[綿棒のような耳かきの後についたタンポポの綿毛みたいなヤツ]で指紋や血液・体液の反応を探している。




(・・・最近は虫眼鏡とかじゃなく[レンズの付いた小さい拡大鏡]で見るのか)


[工事現場とかに置いてある、やたら明るい提灯みたいなヤツ]が光る中、鑑識科の男達が白い布手袋を付けて痕跡を探していた。




「しかしだな、殺人犯じゃ無くてもだ。


 現場保護なんて基本中の基本だろ?少なくとも死体遺棄だ、死体をいじくりまわし動かすなんてのは誰だって犯罪だと解るだろ?」




(オバハンが死体を運ぶ意味が解らん、なんでそんな事をする?)


 そこには必ず被害者との利害関係がある筈だ、動機が見付かるかも。。。




「・・・イエ・・・それが、オバサンの言う事をそのまま信じますと、生きてたらしいんです。


[ガードレールの端のU字」の所に引っ掛かって直ぐの時は、まだ生きていたと。


 ですが、自分の家の目の前のガードレールに引っ掛かって、『何か有ったら面倒な事になるから』と旦那と一緒に男を部屋に戻したらしいんです」


 


 そしてオバサンは窓を閉めて部屋から出て行った、それ以外はなにも知らない。


 そう証言したのだ。




 証言からは真実味が溢れている。


 確かに死体が自分家の前で見付かれば大騒ぎになる、まだ被害者が生きていたのであれば、場所を動かす程度の事はするだろう。




(・・・救急車を呼ぶのですら、一般人の中には敷居が高いっからって避けることもあるからな。その気持ちは解るんだが・・・)




「それでですね、旦那の方が警察に匿名の電話をしたらしいんです。


 いまは、その裏付けをしている最中です」




(・・・なるほど、なら毒殺の犯人じゃない可能性は高いのか)


 敢えて毒殺の現場に足を踏み入れ、死体を寝かすなどはリスクが高すぎる。


 それくらいなら包丁で刺した方が早い。




「いったいこのガイシャは何者なんだ?正体が全く掴めねぇぞ・・・」




 四月一日が部屋を見回す。


 [四角い機械の塊のような、小さいモニターがある古い音楽プレイヤー]


 [ぴょんぴょん跳ねるためだけの遊具]


 版画が趣味だったのか[紙を押える丸いヤツ]が二つ


 壁には たしかダビンチが書いたとか言う[円の中で男が大の字で手を広げている絵]


・・・・・・・




 向かいに住む住人達の証言の裏付けをとる刑事達がいる中、オレはまだ事件現場でまだ証拠を探していた。


「先輩!遅くなりました!」


 息を切らせて飛び込んで来た小鳥遊、その背後に見知らぬ若い男が1人。


「小鳥遊、事件解決ってのは時間が勝負だっていつも言ってるだろ!あと現場では静かにな」


 


『事件は直ぐに風化する』それは四月一日が自分の先輩からいつも言われていた事だった。


 人の記憶は薄れ、証拠は風に吹かれ時間に流されていく。


 だからこそ、初動捜査が最も重要視されるのだ。  




「すみません、聞き込みで[本屋に入ったらトイレに行きたくなってしまい]」


「・・・それなら仕方ないか、で?後のヤツは誰だ?関係者か?」


 被害者の友人関係か?




「ええっとですね」


 小鳥遊が説明しづらそうに手帳を広げ、チラチラと後の男に目線をやる。




「本当にここに死体が・・くそっ、どうすればいいんだよ全く。


 刑事さん、犯人は捕まった・・捕まったんですか?」


「ええっと、失礼ですがおたく、どなたさんですか?」




 混乱している四月一日に小鳥遊が顔を寄せ。


「一応ここのマンションの管理人です、この部屋の住人とは・・」


 被害者[四十谷]とは彼の母の母、[祖母の妹の娘の息子]にあたるらしい。




「明日と言います。


 え~~と、住人から相談を受けたり、振り込みの遅れた住人から家賃を取りたてたりしてました」


 明日は困惑しながら部屋の様子を覗き見て、いやそうな顔をしている。




「はぁ~~まずは母ちゃんに電話か、それと警察はいま居るから・・救急車か?


 あとオヤジと・・葬式の準備とか説明とか・・・くそっ面倒くさいなぁ」




「っとすいません、明日さん。


 まだ事件は解決してませんので電話とかは待っていただけますか」


 スマホを取り出した明日の手を止めさせた小鳥遊は、彼を落ち着かせるように笑顔で説明する。




 彼[明日]が犯人かも知れない、彼の家族も容疑者なのだ、連絡を取り合って証拠を隠滅する可能性もあるのだ。




「で?明日さんですか?


 アンタはここの大家と[祖母の妹の娘の息子]なのは解りました。


 そんなアンタがなんでここに?今日が家賃の振り込み期日って事ですか?」




 今日はまだ18日、月の真ん中くらいだ。家賃を催促するには早すぎる。


(あやしい)




「オレ、すぐ近くに家族と住んでるんですけど、なんかマンション前でパトカーが集まってたから様子を見にきたんだよ、そしたらそこの・・・」


「あっ、ボク小鳥遊と申します、そしてあっちが先輩の四月一日さんです」




「そっちの刑事、小鳥遊さんに職質されて」


 野次馬を掻き分けてマンションに近づいた時、掴まった。


「ええ、凄い顔をして彼・明日さんが[進入禁止の黄色のテープ]の中を覗いてましたので」




(なるほど、確かに明日の言っている事はスジが通っているな。


 自分の所有・・収入源であるマンションで事件が起こったら普通の人間は気になるだろう)


 だからと言ってこの男、明日が容疑者から外れる訳で無いが。




「では明日さんは一応とは言え、大家でこの部屋の人間の[祖母の妹の娘の息子]さんなんですよね。


 出来れば彼・・四十谷さんの事に付いて、知ってる事だけで良いですから聞かせていただけませんか?」




 親族であり大家、しかも年齢も近く家も近いとなれば付合いもある筈、この訳のわからない状況を解決する糸口があるかも知れない。




「と言っても・・おれ、あんまり四十谷さんの事知らねぇんだ・・ですよ。かあちゃ・・母さんの方が知ってるんじゃないかなぁ・・・」




「まぁまぁ、知ってる事だけでいいですから、、まず四十谷さんの机にあるコレ[インドで有名な、太い板で玉を打つ、それでいてバッター?が防具を着けているスポーツ]の写真。


 この写真に写っているのは被害者で間違いないですか?」




「・・ああコレ、コレは昔の写真ですよ、今はこの[バレーみたいなネットを挟んで足とか腿とか頭でボールを打ち合うスポーツ]の方に気持ちが行ってるとか言ってました」




・・・・まったく解らん、こいつ、この明日という男、本当の事を言っているのか?




?「!?コレはなんだ?、明日さん!あんたコレが何か知っているか?」


 押し入れに隠された丈夫なロープ、[ロープを張って、その上で飛び跳ねても切れそうに無い5㎝幅のロープ]がしまってあった。


 人の首を絞めるには長いが、可能な程の丈夫さがあるロープだ。




「?ああ四十谷さん、そんなのもやって・・してた。それもスポーツで使うヤツです。え~~とこの辺に写真があるかも・・・」


 机の上に立ててあったスポーツ雑誌、その中に[ロープを張った上で飛び跳ねる]男の写真とコメントが。




 押し入れの中には、[穴の開いた棍棒に網を張った]ような器具、これもどこかで聞いた事のあるスポーツの道具だ。




「色々やってはオレに進めて来て、直ぐに飽きてオレに道具くれるんだ。


オレはオレで、ボルタリングとか流行りのヤツしかやらないし」




 つまりこの四十谷氏・被害者も飽き性なのだ、雑誌で取り上げられた物を見ては手を出す。


 まったく最近の若者だ。




?これは・・・なぜこんな所が千切れているんだ?


 [リュックサックの首の所の掴む所]の部分が切れている。


 普通に使っていたら切れる筈が無い部分が、切られたように千切れて無くなっている。




(事件とは関係無いのか?・・・しかし・・・)




 !!??「キミ!そこの壁に掛っている服と、この写真の服は同じ物だか!!


 壁に掛る古い礼服、その服は良く調べたか?!」




 こんな部屋に置かれているには異質過ぎる、昔の軍の将校が着ていた礼服。


 その[肩の所に付いている、金と黄色の短いロープみたいなヤツ]に赤黒い汚れが着いていた。




「まさか血か?ただの汚れだと見逃していたが、この写真と見比べてわかった。


 これは・・まさかガイシャの血か?」なんで[軍服の肩から首の所に着いている金色の短いロープ見たいな飾り紐]の所に血が着くような事が・・・




(まさか、犯人の殺害方法は毒殺だけでは無いのか?)




 毒を盛られ・[カーテンを縛る帯みたいなヤツで]絞殺・[小さいTVの着いた機械の箱]での撲殺されそうになった、だから被害者は必死に窓から逃げ出したのか?




 犯人は犯行時刻に被害者と共に、この部屋にいた可能性が高い!


 顔見知りが犯人か?!




「この写真に写っている男、こっちの写真にも写っているこの男は何者だ?


 明日さん、この男との面識は?」




[ロープを張った上で飛び跳ねるスポーツ]の写真にも、[太く大きい板で玉を打つスポーツ]の写真にも写る男、四十谷の隣・もしくは直ぐ近くで写りカメラの方を向いている。


 彼なら被害者の為人を知っているかも知れない男。




「写真?・・ああ十さんですか?よくこの部屋に遊びに来てましたよ。


 ぼくも何度か一緒に飲みに行ったりしましたが」




 ・・・・・・・・・・


 数時間後に呼び出された十、そしてともう一人の男。


 神妙な顔で挙動不審、顔を下に身体を揺らし落ち着かない足を見ていた。




「・・・小鳥遊、また新しい男を連れて来やがって、あっちの男は誰だ?」


 男の顔は見覚えが無かった。




「先輩、あっちの彼はガイシャの頼んだ寿司を持って来た男です。お隣の証言では」


『ほらあの[後に箱みたいなヤツが付いたバイク]アレが止ってたんです』


 昔は[金属のぶらぶらして揺れるやつ]だったのに、最近は[箱みたいなヤツが付いたバイク]ですもんねぇ」




?!「なにぃ!!!つまりこの寿司を持って来たヤツか!でかしたぞ!」


 てっきりどこかの回転寿司か、スーパーで買ってきた物かと思っていたがまさか出前だったとは。




 寿司を出前した男の名前は一口、京都が地元の男だった。


「・・なんすか」不機嫌そうな男は四月一日に目を向け、さも嫌そうな顔で呟く。




「いや、何でもない。一口さんか、昔京都にいた時にお世話になった先輩も同じ名前だったんでな、ちょっと驚いただけですよ」


 変わった名前でバカにされたと思っていたのだろう、一口は刑事がバカにしたのでは無いと理解して表情を戻した。




「こっちじゃ初対面のヤツは、大体変な顔するから、、、でもオレ何も知らないっすよ、この部屋にも今日始めて出前で来ただけで」




「オレも何もしらない、もう良いだろ、今日は疲れてるんだ」


 十は頬を押え、こちらもいやそうな顔で刑事達に目をやっていた。




「先輩、こっちの十さんはさっきまで歯医者で[金属のぎゅいんぎゅん鳴る小さいドリル]で歯を削ってる最中だったんです。


 あの[顔を上向けにして寝かせる椅子]に座って治療中だったので、終って直ぐに来て戴いたところなんです」




「なぁに、手間は掛けさせません、直ぐに済みますから、少しお話しを聞かせていただけませんか。


 勿論お断りいただいて結構ですが・・・そうなると後日、署の方からお迎えに行かせてもらう事になりますよ、もちろん所轄のパトカーでね」




 警察の車が家の前に留まり、玄関に刑事達が向かう。


 そんな光景がご近所さんの目に写ればどうなるか、絶対に面倒な事になりませんか?




 ヤツら井戸端会議と噂好きのババア達、暇を持て余し・娯楽に飢えたハゲタカ達が、ある事無い事噂して、もうろくした目玉と記憶力で被害妄想を膨らませる・・・かも知れない。




 やれ『あの子は昔万引きして捕まった事がある』だの、やれ『あの年齢で彼女がいないのはサディストで変態』だの、前科があるとか家族がどうとか、ある事無い事をね。




 老眼でろくに見えもしないのに『私は見たんだ』と言いふらし、現実と被害妄想の区別も着かないもうろく脳味噌にくせに『近所の猫が減ったのはアイツのせいだ!アイツが猫を殺しているんだ』とか言うかも知れないぞ、と。


 


 パトカーが家の前に止り、警察が家を訪問するって事は、そう言うこともあり得る・・だろう。


 警察はそう言うことを解っていて『丁寧な対応』をするのだ。




チッ・・・はぁ~~


「わかったよ、でも本当になにも知らないんだ」


 十は明らかに不機嫌そうに舌打ちし、苦々しくも諦めたように息を吐いて答えた。




「まずは十さん・・でよろしいので?」


「ああ十と書いて十だ、解り易いだろ」




・・・・・・




「それで被害者とはどのような関係で?友人と考えてよろしいのでしょうか」


「・・・まあ、そうだな。ちょっと前まで幕張行ったりしてたしな・・でも最近は連んでねえよ」


 十は思い出すのも嫌なのか表情が曇る。




「何があったのか詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか?」


  喧嘩・疎遠になった理由が殺しの動機に結びつくかも知れない、だから普通はとぼけるか自分に後ろめたい事が有れば嘘を着く、だが十はあっさりと答えた。




「これ・・・」


 十の見せたスマホの画面、そこには[電線に着いている白いヤツ・丸型のヤツとか鐘型のヤツ]が。




「おれさ、この[電線に着いている白い陶器]が好きなんだよ。


 コレを青空と一緒に写真に撮ってSNSに上げてたんだ。そしたら四十谷のやつ!


 『電線に着いてる白い陶器なんて誰も興味無ぇって!wwww』とか煽りやがって!」




 自分だって[コートとか軍服の肩の所の布]とか集めていた癖に!




・・・?「それは・・小鳥遊、この部屋から[軍服の形の所の布]は見付かったか?」


「ああ、もう無いっす、ムカついたからおれ、捨ててやったんです」




・・・ああそう。




「それに四十谷の野郎、おれが[ジャンパーの紐の端を止める筒状のプラスチックの器具]を作ってる会社に勤めているのもバカにしたんだよ、一応世界シェア一位の企業なんだ!」 




「え?!まさか十さん、あの[ジャンパーの紐をとめる筒状のプラスチック製品」の会社にお勤めだとは!・・・オレ、あれのお陰で何度助かったか」


 ジャンパーの紐を抜け無いように止める筒型のプラスチック、アレが無ければ紐がジャンパーの中に入ってしまって、引っこ抜くか頑張って紐を通し直すしかないのだ。




・・・クッククッククククッ・・・ははははっははははは!!!




 まさか刑事になってこんな事件にぶつかるとはな、はははっ、殺人事件だってのにアレだ、ガキの頃モホ何とか、[地球の地殻とマントルの境界]ってのを教わった時のような気分だ。




「つまりはアレだ、犯人はこの中にいる!全部まるっとお見通しだ!って事だ」


 三十路も過ぎた男、四月一日が興奮して声を上げた。




 小鳥遊・明日・十・一口が四月一日の言葉に目を開き、左右に立つ男の顔を凝視した。




「この事件、正直訳のわからない事ばかりだったが、二人の証言と明日さんの話を整理すれば簡単な事、そうですよね?・・・殺人犯の一口!




 お前が寿司に毒を盛ったんだ、動機は・・・そうだな寿司の代金を踏み倒そうとして被害者と口論になった、だからカッとなったお前は[カーテンを縛る帯みたいな布]で首を絞めようとした。


 だが掴んだ瞬間に布が短い事が解って撲殺に切り替えたんだ!




 被害者は布にお前の手の皮膚が残っていると考え、死の直前にそれを奪って逃げた!」


 鑑識が[カーテンを縛る帯みたいな布]を調べたら直ぐに解る事だ。




?「・・・じゃぁお前、いつ寿司に毒を盛ったんだ?最初から殺すつもりだったのか?」


 考えたらよく解らない?




「な?!なんでオレなんですか!オレが寿司に変な物を混入させる訳が無いだろ!」




「・・そうだな、例えば最近流行りの[食用コオロギ]


 それを寿司として出したら被害者の四十谷氏が切れた・・とか?」




『この寿司屋は、こんなゴキブリみたいな物を乗せて客に喰わせるのか!』とか騒がれた、とかか?




「どうせ口から[食用コオロギ]の足をチョロっと出して他の客に見せたり、フェイスブックとか、ティックなんとかに下品な動画を上げたりして炎上したとかだ、そうだろ?」




 最近の若いヤツは、寿司屋でくだらない事をして動画を上げて炎上するバカが増えている。


 そんなくだらない事をして自己承認欲求を満たす意味が解らないが。




「寿司、そして流行りに乗りやすい男!それが四十谷と言う男の正体だ。


 そして自分の勤める寿司屋に謝罪もしない男にカッとなった一口さんは、動画の男が寿司を頼んだ事を知って毒を盛った!




 だが毒では死ぬまで時間が掛る上に、四十谷は寿司屋・寿司をバカにするような事を言ったんだ。


『醤油を直飲みしたくらいで、学生の人生を終了させるなんて酷すぎるんじゃね?とか


 大企業の寿司屋は時価総額が何億かってくらい儲けてるくせに、弱者の若者相手にそこまで追い込むなよなぁ・・ああ違うな。


 アンタの所のコオロギ寿司は別の意味で最悪だ』とか言ってな。


 


 そして部屋で口論になった、言い争いになってヤツに毒の寿司を喰わせたんだ。


 この[食用コオロギを喰らえ!]とか言って、違いますか?」


 


 SDGSが起こした悲しい事件、環境意識の高い寿司屋が次世代のたんぱく質に手を出した結果、こんな物喰わせるな!と・・・




 味にうるさい日本人には、まだコオロギ寿司は早かった。それがこの事件の全貌だ。




「違う!オレは確かに寿司を出前したけど、殺したりはしてない!


 玄関で寿司を渡して金を受け取って帰っただけだ!




 それにウチの寿司だって、そんな変な物を客に出したりしない!


 コオロギなんて物、店が潰れそうになっても客に喰わせるもんか!


 その後は店のガラスを[T字型のやつ]で掃除してたんだぞ!」


 


 違うのか?客が醤油を直飲みして寿司にアルコールを振り掛ける、だから寿司屋もコオロギをシャリに乗せてレーンで回す。


 オレは、最近の回転寿司は戦場だと思っていたのだが。




「先輩・先輩、迷推理の最中ですみません。鑑識の月見里さんから電話が」


 四十谷の持っていた布、そして[ガードレールの端のUの字][軍服の綱みたいな装飾]を調べ、その結果がようやくでたのだ。




「どんなに嘘を付こうと証拠が全てを証明してくれます、いいですね」




 先端科学の力、税金を山程掛けた犯人を捜す為だけに特化した鑑識技術、どんな小さな証拠でも見逃しはしない!




「はい、もしもし母さん?・・・間違いました先生、証拠の事なんですが」




 鑑識科の月見里さんは四月一日の、[小中の男子学生が女の先生を母さんと呼んでしまう現象]に少し戸惑いながら、少し笑って答えた。


 


「・・・オホンッ、四月一日刑事、結果からお伝えします。


 被害者の持ち物である布、そして[靴紐とかの先端に付いているプラスチックの覆い]


 [靴の紐を通す穴][靴を履くときアキレス腱の所にある小さい布]まで隅々調べましたが、証拠となる物あは見付かりませんでした。 




」」」」鑑識の結果が靴に集中してる、一体なにが彼女をその部分の鑑定にかりたてたんだ?・・・解らない。




「誤解しないで下さい、足の先・・実際は靴の先までですが、そこまで調べたという事です」




・・・と言う事は、(おれの推理は間違っていたのか?)


 スーツの内側[シャツの背中の布の部分]が汗で濡れる。


 


 ようやく浮かび上がり出来た相関図、ホワイトボードに貼り付けたと思った瞬間、実は[電柱に巻き着けてあるボコボコの張り紙禁止のヤツ]だったような状態。




「つまり・・事件は白紙に戻ったってのか?」


 オレ達は何も解らないまま事件は迷宮入りするってのか。




[腕と手首の所の細い線]が痒くなる、こんな解らない事ばかりの事件は始めてだ。




「?!なっなんだってぇぇぇ!!」


 携帯に耳を当てていた小鳥遊が驚きの声を上げた!




「お前・・オレ達はいま、この訳のわからない事件に集中しているんだ。いきなり大声を上げるな」


「ですが先輩!・・実は今電話がありまして・・被害者の男が」




「なんだ?生き返ったとでもいうのか、だからと言ってコレは殺人未遂事件になっただけだ、凶悪事件なのは代わり無いんだぞ」




「ですが先輩・・・」








・・・・・そして事件は解決した、被害者の四十谷は寿司に塗られていたワサビが辛すぎた事に驚き、家に茶が無い事を思い出した男は自販機を探すために、思わず窓から飛び出した。




 慌てていた男はガードレールの端に腹を強打して失神、意識を失っていた。


 男の辛さを訴える叫び、そして窓から飛び出した男の必死の形相、そして意識を失った様子に凶悪事件と直感的に考えた前の夫婦が、四十谷を部屋に戻して慌てて通報した。


 コレが事件の全貌だった。




「そして、オレ達刑事が頭を悩ませている間、四十谷は[寝ている時、ビクッとなる現象]を起こし、ようやくさっき起床したってか」




 全くバカな話しだ、通報が早かった・・・早すぎた結果、先走った男達が名称も解らない物を相手に迷走していたのだ。




「けどまぁ・・・この事件には謎が多い、だから調査報告は細かく、尚且つ丁寧に書かないとな」


 偉いやつ・頭の良いヤツならきっと全ての謎と名称が解るはず。


 全ての謎が解けた訳では無い、まだ名称の解らない事ばかりなのだから。




 こうして事件の全てが記された報告書が残った。


 Google・ウィキペディア・スマートフォンに頼らず、全ての秘密を解く者が現われる事を信じて。

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