7色の風船の悲劇
アほリ
7色の風船の悲劇
「ごろにゃーーご!!私、風船をこんなに貰っちゃった!!」
白猫のさくらは、通りすがりの女の子にヘリウム入りのゴム風船を7つも貰って、ウキウキ気分だ。
身体に5つ。尻尾に2つ。
赤、青、黄色、白、ピンク、オレンジ、緑色。
各々パンパンに膨らんだ風船。良く晴れた太陽の光を浴びて、艶々と輝いていた。
「にゃーーご!!まるで身体が浮かびそうだわ。まるで、私が風船になったみたい。
私、風船大好き。まあるくて、フワフワしてて、可愛い花の様な匂い・・・」
白猫のさくらの華やかな気持ちは、まるで風船のように膨らんでいった。
「ふうせん!ふうせん!ふうせん!ふうせん!にゃんにゃんにゃんにゃん!」
白猫のさくらは嬉しくなって、スキップしながら歩いた。
「ふうせん!ふうせん!ふうせん!ふうせ
ん!にゃんにゃんにゃんにゃん!」
白猫のさくらがスキップすると、身体中に紐で結んだ7色の風船たちは、リズミカルに愉しそうに揺れた。
それを見た白猫のさくらは益々嬉しくなって、ピョンピョンとホップステップジャーンプ!!
ぱぁーーーーーーーん!!
「うにゃあっ!!」
白猫のさくらは仰天してのけ反った。
突然、身体に結んだ白い風船がパンクしたのだ。
「えっ?何で?何で?何で?何で?何で風船が割れちゃうの?!」
白猫のさくらは呆然とした。
白い風船が割れたのは、白猫のさくらが激しくスキップした際に、風船同士の摩擦でパンクしたのだ。
「あーあ・・・風船を1個ダメにしちゃった・・・
でもいいわ。まだ6つ風船があるんだし。」
白猫のさくらは気を取り直して歩いた。
ぽん。ぽん。ぽん。ぽん。
白猫の身体に結わえた風船が、ぽんぽんとリズミカルに音を立てて踊っている。
5つの風船が愉しそうに・・・
「えっ5つ・・・?!」
白猫のさくらは空を見上げた。
ふうわり・・・
緑色の風船が、白猫のさくらの身体を離れて空高く飛んでいるではないか?!
「えーーー?!マジなの?どうしてなのニャ?!」
白猫のさくらの身体に結わえた風船の紐は、緑色だけ柔だったのだ。
それが、白猫のさくらがスキップしたり、歩いているうちに紐がほどけて空へ逃げてしまったのだ。
「緑色の風船さぁーーーーん!!私のこと嫌いなのぉーー!!
私が何をしたっていうのぉーーー!!
私の事嫌いにならないでぇーーー!!」
白猫のさくらが空を見上げて叫んでも、緑色の風船はガン無視して、豆粒のように小さくなり遥かな雲間へ去っていった。
「私の風船が5つになっちゃったニャ・・・」
白猫のさくらは飛んでいく緑色の風船を見送ると、気を取り直して再び歩き続けた。
しかし・・・
「シマッタニャぁーーーーー!!」
突然風船の紐が脚が絡んで、マトモにあるけなくなった。
「うざいにゃーーー!!うざいにゃーーー!うざいうざいうざいうざい!!」
白猫のさくらは七転八倒、バタバタと暴れた。
「歩かせてーっ!!歩かせてにゃーーー!!」
ぷすっ!
白猫のさくらの伸ばした爪が、オレンジ色の風船に刺さった。
ぱぁーーーーーーーん!!
「うにゃあーーーーーっ!!」
白猫のさくらはビックリした拍子に、脚に絡んだ風船の紐が解れた。
しかし、その代償は大きかった。
「ええいっ!私の爪めぇっ!!何で風船を割っちゃうのよ!!引っ込め!!私の爪!!」
白猫のさくらは、割れたオレンジ色の風船の破片が引っ付いた爪を肉球でバシバシ叩いた。
「これで、風船は後4つ・・・」
白猫のさくらは、割れて垂れ下がった白い風船とオレンジ色の風船の破片を引き摺り、4つの風船を揚げて、緊張で髭をヒクヒクさせながら更に歩いた。
「お嬢ちゃん!!その風船・・・ちょうだいニャ!!」
振り向くと、1匹の厳ついどら猫が物欲しそうについてきていた。
どら猫のイニは目を爛々と輝かせて、白猫のさくらの身体に結んである4色の風船に見惚れていた。
「ねぇお嬢ちゃん・・・その風船頂戴な・・・ねぇ・・・ねぇ・・・」
・・・や、やべぇ奴だ・・・!!
白猫のさくらの脚がガクガクと震えた。
「おいら、風船大好きなんだ・・・ねぇ・・・1個でもいいからさあ・・・早く風船頂戴よぉ・・・ねぇ・・・ねぇ・・・」
キジトラどら猫のイニは、興奮で鼻の孔をパンパンに孕ませ鼻息をフン!フン!と吹き出し、涎を垂らしてハアハアと荒い息を吐き、髭をヒクヒクされて激しく興奮した状態でジリジリと白猫のさくらに詰めよってきた。
「にゃっ・・・にゃぁぁっ!!」
白猫のさくらは恐ろしくなって、とっさに逃げ出した。
「うわーーーーーっ!!逃げるにゃーーーー!!俺にも風船を分けてくれぇーーーーー!!1個でいいけどさぁーーー!!出来れば全部頂戴にゃーーーーー!!」
ぽん!ぽん!ぽん!ぽん!
身体に結んだ4つの風船が受ける風の抵抗で、白猫のさくらは思うように走れなかった。
そうこうしているうちに、涎を吹き飛ばしてどら猫のイニが迫ってきた。
「君、片耳の切りかき見たら、君は『保護猫』だろー?ほら!俺も『保護猫』だニャーーー!!耳の切りかきもお揃じゃーーーん!!
だから、俺とあんたは同じ『保護猫』同士だから、お近づきの印にあんたの風船ちょうだーーーい!!」
「そんなお近づきは嫌にゃーーー!!」
遂に、どら猫のイニは白猫のさくらの身体に結んである青い風船を捕らえた。
「ほぉーら!捕まえたどー!!風船!!
うにゃ~~~~~~!!風船だニャ~~~~~!!」
「にゃっ!!」
白猫のさくらは、どら猫のイニに引っ張られて前肢は宙を描いてジタバタした。
「ふうせんふうせんふうせーーん!!もう離さないにゃーーー!!」
どら猫のイニはギュッと青い風船を抱きしめ、爪を思わず立てたとたん・・・
ぱぁーーーーーーーん!!
「うにゃあっーーーーー!!風船割っちゃったーーー!!ごめんごめんにゃーーー!!」
青い風船を思わず割ってしまったどら猫のイニは、慌ててスタコラサッサと逃げていくのを、白猫のさくらは呆然として見詰めていた。
「な、なんなの・・・?!」
その時だった。
「かぁーーーーーー!!」
ばさばさばさばさばさばさ!!
ぱぁーーーーーーーん!!
不意打ちだった。
上空から、いきなり1羽のカラスが飛んできて黄色い風船を嘴で割ってきたのだった。
「へへへっ!!猫の風船割っちまったーーー!!遂出来心だよーー!!」
悪戯カラスのジョイは、悔しがる白猫のさくらにアッカンベーをしてそそくさと飛んでいってしまった。
「何でカラスまで・・・?私、カラスが大の苦手なのに・・・」
遂に、白猫のさくらの風船はピンク色と赤しか無くなってしまった。
「どうしよう・・・どうしよう・・・何でみんな私の風船を狙ってくるの???」
白猫のさくらは、割れた風船の破片を引き摺り、2つの浮かんでいる風船を付けてとぼとぼと歩いた。
「あーあ・・・私の風船が2つ・・・」
ぱぁーーーーーーーん!!
「うにゃあっ!!」
また風船が割れた。
白猫のさくらが振り向くと、ピンク色の風船が柵の有刺鉄線に触れてパンクしてしまったのだ。
「もう嫌だニャぁぁぁーーーー!!」
もう7つあった風船が残り1個になってしまい、取り乱して泣き喚いた。
「何で何で何で何で何で何でぇ?!どんどん風船が割れちゃって!!何でニャーーー!!」
ひとしきり泣いた白猫のさくらは、止めどなく流れる涙を肉球で拭って、まだ1個残っている赤い風船を見上げた。
「でも、まだこの風船があるんだ・・・希望はまだあるニャ・・・」
白猫のさくらは、前を向いて再び歩き続けた。
「ふうせん!ふうせん!私のふうせん!」
しゅ~~~~~~~~・・・
白猫のさくらの後ろで、空気が漏れる音が聞こえてきた。
「あれ?この風船って、こんなに小さかったっけ?」
振り向くと、どんどん縮んで浮力が無くなり垂れ下がってきた赤い風船を見てエッ?!となった。
「嗚呼・・・私の最後の風船が・・・」
白猫のさくらは慌ててすっかり縮んでシオシオになった赤い風船を確かめた。
風船の表面に、穴が空いてそこからヘリウムガスがしゅ~~~~・・・と漏れていたのだ。
「まだ大丈夫よ!!希望は捨てないニャ!!」
白猫のさくらは縮んだ赤い風船の結わえてある吹き口を爪でほどくと、思いっきり息を吹き込んだ。
ぷぅ~~~~~~~~~!!
ぷぅ~~~~~~~~~!!
白猫のさくらは頬っぺたをパンパンに孕ませ顔を真っ赤にして、赤い風船を口で大きく膨らませた。
ぷぅ~~~~~~~~~~!!
すると突然、赤いゴム風船の表面に空いた穴からしゅ~~~~~~っ!!と空気が漏れる音がしたとたん、
ぱぁーーーーーーーん!!
と、パンクして四散してしまった。
「全部、風船割れちゃった・・・アンラッキーだわ、私・・・」
身体に割れた風船を結んだままで途方に暮れる白猫のさくらは、涙目で空を見上げた丘の上。
「夕陽が綺麗・・・こんなに夕陽って綺麗なんだね・・・」
~7色の風船の悲劇~
~fin~
7色の風船の悲劇 アほリ @ahori1970
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