ある家族の話 【KAC2023】

佐藤哲太

ある家族の物語 【KAC2023】

 八坂家の食卓を囲むのは、5人。

 穏やかな父、おしゃべりな母、苦労が浮かぶ長男、天真爛漫な長女、絶賛反抗期風の次女。

 年齢は順に46,47,18,16,14。

 どこにでもあるような、普通の家族である。


「父さん、醤油取って」

「はいよ」

「お兄ちゃんあたしのにも醤油よろ!」

「はいはい。三華みかは?」

「そこ置いといて」

「はいよ」


 今日の食卓のメインディッシュは唐揚げのようだが、それぞれの食卓に小鉢があり、今日の小鉢には、どうやら心太ところてんが入っているようだ。

 その心太に長男である一哉かずやが醤油をかけ、上の妹である寿希じゅきのにも同じくかけ、かけ終わった醤油を下の妹である三華の方へ置く。

 そんな、よくある家族の光景が、そこにはあった。


「にゃーお」


 そんな食卓に近づいてくる、1匹の猫に全員の視線が向く。


六太ろくた、どしたー?」


 その猫を構うため、席を立ちしゃがむのは次女の三華。この時ばかりは彼女の表情も反抗期のそれを忘れていた。

 そして徐に棚から全猫にとって麻薬レベルの中毒性を持つ、ペースト状のおやつを取り出し、六太に与え出す。

 そんな彼女へ——


「三華は六太には優しいわねぇ」

「動物に優しいのはいいことさ」


 慈愛に満ちた視線を向けるは、父親の五郎と、母親の四葉よつは


 そう、聡明なる読者諸君は、これでお気づきだろう。


「うわ、1月生まれの明日のラッキーナンバー7だって。なんかやだなー」

「いぇーい! あたし明日のラッキーナンバー8!」


 そう、この家族には、7ラッキー7がない。

 ……え? 9もないって?

 そこは八坂家。末広がりの八を冠する八坂家には、8まであれば十分、ということで。


「三華、明日何日だっけ?」

「自分で調べろバカ兄貴」

「まぁ明日は17日だし、なんとなくいいことなさげだよねー。いっそひっくり返して1L日にすればいいのにっ」

「読めねぇよ!」


 ほら、ご覧の通り。

 ということで、今日もこの家族は、7を嫌って過ごすのだった。

 

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