春 その二
その我慢しなければいけない期間が終わったから、オレは早速この道の走り初めをすることになったのだ。
きらっとバックミラーで何か光った。バイクだ。オフロードバイクが2台、オレの後ろに追いつき。
左にウィンカーを出して減速し、先に行かせた。
オフロードバイクは左手を上げ謝意をあらわし、追い越してゆく。
「オフロード、だよな。タイヤがオンロードだけど。あんなバイクがあったんだっけ」
オフロードバイクにオンロードタイヤを履かせるのはモタードと言うカテゴリーになるそうだが、オレは詳しくないのですぐには思い出せなかった。
しかしバイクはひらひらと、気持ちよさそうにカーブを曲がってゆくものだ。乗ってて楽しいんだろうな。
マナーを守ってくれれば。
時々、阿保みたいにふくらんで対向車にぶつかりそうになるやつもいて、さすがにそれにはオレもムカつくものを禁じ得ないから、くれぐれも安全運転でお願いしたいものだった。
いい子ちゃん呼ばわりされるということは、勇気があるということでもあるから。
酷道ながら家屋や地元の土建屋や雑貨屋の鉄筋コンクリートづくりの建物もあったり、ジュースの自動販売機も意外にあったりして、意外に(失礼!)人口もある、ということは、そこに人々の生活があることをうかがわせる。
家の前でご近所さんと談笑する地元の方の姿も見受けられる。
「やーあったかくなったねー」
「ほんにねー」
「でもまだ夜は寒いねー」
などといった日常の会話を楽しんでいる。
土建屋では駐車場のトラックを洗ったりするのを見ることもあった。
酷道という言い方は、使う言葉が悪いので悪口っぽく感じないでもない。特に地元の方々に失礼にも思うのだが。幸いにして、親しみをもたれる言葉になって、テレビでも取り上げられたりして。
ちょっとした観光スポットみたいになっていたが。やっぱりそこに人の生活もあるから。
「すいません、ちょっと、通らせてもらいます」
と、酷道ドライブの際には、頭を下げる気持ち、自戒の気持ちも忘れない。
とはいえ、山間部の狭いくねくね道だ。どうしてわざわざそんな道を、って感じだが。要は、冒険だ。
こんなオレでも、冒険を求める気持ちがあったのだ。
集落も過ぎ去ったようで、家屋を見かけなくなる。次いで木々が生い茂り、影を道に落とし。木漏れ日が刺さるように道に落ちる。
木陰と木漏れ日が交錯するくねくね道をしばらくゆけば。その木々もなくなり、にわかに視界が開けてくる。残雪も増えてくる。
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