聖女の試練
葉舟
第1話
やんちゃな子どもというのはどこにでもいる。
そんな子どもに家柄と才能が有れば、諌められる者もいない。どこまでも増長したクソガキが出来上がる。
そんな子どもに与えらるのが、聖女の試練だ。
かつて、国を救ったされる乙女が、神々に乞い願って作られたカード。最初にそのカードを手にしたのは国王陛下や王子殿下、宰相閣下に将軍閣下に大魔術師といったそうそうたる方々だと伝えられている。
カードに与えられた試練を超えた先には、いかなる望みでも叶う栄光があるとも伝わっているが、超えた者の話は聞かない。
願いがかなうカード。何も知らない最近の若人たちは、聖女の試練をそんなふうにウワサしていた。
試練を超えられるなら、まあ、願いくらいは叶うだろう。なにしろ試練を超えられた者は、過去から現在に至るまでいない。
あの七枚のカードは、聖女様が時の権力者から身を守り、清らかな乙女であり続けるために与えられたものだ。お手軽に願いが叶えられるようなちゃちなモノじゃない。
だいたいやらかしたクソガキにしか与えられないカードだ。カードが与えられる事が罰則だと、気づけよ。
魔術学院の四天王を名乗り、調子こいているガキども。
彼らは選ばれた者しか入れない事にされている、古めかしく荘厳な小さな部屋に呼び出されていた。
部屋の真ん中に置かれたテーブルの上に並べられた七枚のカード。彼らは裏向きに置かれたカードを前に互いを牽制していた。
彼らはどれでも好きなカードを持って行けと言われている。
不吉、不幸、不遇、不運、悲運、衰運、凶運。七枚どれもがアンラッキーカード。
恵まれた生まれのクソガキども、お前らも世の中の理不尽を知ればいい。
なーに、即死する様なカードはないからな。
幸せに繋がらない喜劇を演じて。
カードに封じられた悪魔たちは、クソガキどもの凋落を望んでいる。彼らの悲嘆こそが、悪魔の愉悦であり、餌だった。
聖女の試練 葉舟 @havune
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