甘味処にて
紗久間 馨
新メニュー
ここ数ヶ月、マコは漠然とした不安に悩まされていた。その不安と真剣に向き合えば理由は判明するのかもしれないが、向き合うことすら不安に感じてしまい、できなかった。
緊張感と不安で睡眠不足が続く。元気を装ってはいるが、正直に言ってつらい。抱えているものを全てを投げ出してしまえば楽になれる。だが、それをしてしまえば後悔することをマコは分かっているので、頑張るしかないのだ。
仕事帰りにとてつもない目眩に襲われた。あと5分ほどで家に着くというのに。
目に入ったのは甘味処だ。和菓子と茶に癒されようと考え、立ち寄ることにした。これも何かの縁かもしれない。
「おすすめは何ですか?」
マコはテーブルに案内されるとすぐに尋ねた。
「ちょうど新しいメニューが出たばかりでして・・・・・・」
「じゃあ、それください。あと温かいお茶も」
店員がラミネート加工されたメニューを出して説明しようとするのを遮って注文する。考えるのもメニューを見るのも面倒に感じた。
「こちらアンラッキーセブンと温かい緑茶でございます」
しばらくして注文の品が運ばれてきた。聞き慣れない言葉に少し動揺する。縁起の悪そうな名前だ。疲れすぎて聞き間違えたのかもしれない。
「ごゆっくりどうぞ」
そう言って店員が去っていく。テーブルには数種類の和菓子が盛られた器がある。緑茶の注がれた湯呑みと急須からは湯気が立っている。
テーブルの端に寄せられたメニューの中から、店員が見せようとしていた新商品の説明を手に取る。
『
アンラッキーセブンと聞こえたのは間違いではなかった。
七福神がモチーフの餡子を使用した和菓子の盛り合わせだ。7種類の小さな団子やおはぎ、大福などがある。餡子も粒・練り・白だけでなく、ずんだの緑や苺の赤もあって華やかな印象だ。
はっきり言って、説明を読んでもそれぞれがどう七福神を表現しているのか分からない。
甘味処にて 紗久間 馨 @sakuma_kaoru
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