【KAC20236】周りの人に福をもたらす男のお話

猫月九日

第1話

 底辺Web作家であるところの僕は、あまりのその不甲斐なさかに天才ハッカーである妹にノベリストAIロボット、アイザックを与えられた。

 そして、今日もアイザックと共に、小説を書いていきます。



 やぁ、ようこそ。

 今日は何にする?

 うん?「アンラッキー7」について話してほしいって?

 なんだそりゃ、ラッキーじゃなくてアンラッキー?しかも7もついてるし。

 なに?7が重要なの?……わかった。

 じゃあ、あの話をしてやろうかな。

 とてつもなく「ラッキーだった」男の話を。


 とある街に一人の男がいた。

 男の名前はセブン。なんてことはない、単に7人目の子供だったってだけで、セブンって名前をつけられたんだ。

 酷い親だと思うか?俺もそう思う。

 だけど、そんな適当な名付けからは考えられないくらいに大事にされていたんだ。

 理由は、占い師にこんな事を言われたからだ。


「この子は周りの者に福をもたらすでしょう。大事にしなさい」


 その占い師の言葉を間に受けた両親はただただその子供を大事にした。

 外は危険だと出さずに家の中でまるで神の子のように扱った。

 まぁ、今から見ればただの軟禁状態だよな、ただそれも親からの愛情からのものだった。

 ……歪んだ愛情だったのは否定できんがな。

 その結果、どうなったと思う?

 両親は不幸になった?

 そんなことはない。

 その子が生まれてから、貧乏だった家は大きく反映した。

 たまたま買った宝くじは1等が当たり、それから始めたビジネスは急成長、一気に億万長者だ。

 誰もが羨むような、一攫千金物語。

 両親は、それがセブンのおかげであることを全く疑うことは全くせず、セブンにいっそうの愛情を注ぐようになった。

 セブンを神聖視し、その力が薄まることのないように、俗世からは一切遠ざけた。

 そうして、セブンは大事にされ続けたんだ。

 ……話はこれで終わりだ。


 何?セブンはそれからどうなったかって?

 さぁな。

 おいおい、ふざけているわけじゃないぜ。

 言っただろ?俗世からは一切遠ざけたって。

 だから両親は、セブンの情報を外に出すことすら嫌がったんだ。

 情報が外に漏れることで神聖が薄れるとでも考えたのかもな。

 俺がこの話を聞いたのは、たまたま店にやってきた「スリー」って女からだった。

 名前が似ているよな、まぁ、関係を疑うのは無理はないが、無駄だ。

 もういないからな。


 さて、どうだった?この「ラッキーだった男」の話は。

 お前さんの望む、「アンラッキー7」に合ってたかい?

 うん、よかった。

 それじゃあ、つまみはこのくらいにして。

 そろそろ本編に入ろうか。




「…………なにこれ?」


「というわけで本編です」


「いやいやいや、違うだろ、何だ今の語り口!?」


 天才であるところの妹が作った物語AIロボット、アイザックに物語を作ってもらおうとしたら、こんな話が返ってきてた。

 流石にこれはどうなのかと、僕は詰め寄る。


「こういうのも面白くないですか?」


「面白い面白くないで言ったらちょっと面白かったが」


 しかし、相談した後に急にいきなりこの話を開始された身としては戸惑いの方が強い。話しかけても全く反応なかったし。

 だけど、アイザックは笑っている。


「毎回同じような話をしてもいまいちでしょう?たまにはこういうのもいいもんですよ」


「……それをロボットであるお前に言われるのもなぁ」


 なんか違う気がする。毎回決まった結果を出すことがロボットのいいところではないだろうか?


「まぁ、ともかく今回のお話はいじょうです。お題に合ってる合ってないかは別として少しでも面白さを感じていただけたら幸いです」


「……うん。まぁ、もういいや」


 とりあえず、なんか疲れた。今日はもう休むことにしよう。


「どうもありがとうございました。次のご来店にご期待してます」


「お店じゃねぇだろが!?」

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【KAC20236】周りの人に福をもたらす男のお話 猫月九日 @CatFall68

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