七回の表の守備……マウンドに向かう

りり丸

七回の表の守備……マウンドに向かう

 プロ野球チームのドッグスで投手ピッチャーをする七尾恭介ななおきょうすけは主に七回を任される。

 七尾は高卒入団十二年目の右腕で、ドッグス一筋で一軍に定着している。

 長く在籍しているにもかかわらずあまりスポットが当たらないが、ファンは多い。

 相手はライバル球団のキャッツであり、次はキャッツの攻撃である。

 ドッグスが五得点、キャッツが二得点で試合の行方はまだ分からない点差である。

 六回裏の味方の攻撃が終わり監督がベンチを出る。

 七尾はブルペンで最後の一球を投げ終わり、水を一杯口に含む。

 ベンチから小走りでマウンドへ向かう。


「ドッグス、投手ピッチャーの交代をお知らせ致します。六部ろくべに代わりまして七尾恭介~。背番号四十七」


 ホームスタジアムであるからDJからのアナウンスと、七尾の登場曲が流れる。

 マウンドでの投球練習を数球行い、七回の表の相手の攻撃が始まった。

 先頭は七番打者バッターからであり三人で終わらせたい。

 投球を進めること七球目、フルカウントからの一球は二塁方向へのゴロである。

 しかし、二塁手は平凡なごろにもかかわらず、掴み損ねエラーで出塁させてしまう。

 七尾は苦笑いで次の打者に集中する。

 次のバッターは送りバントで一塁走者が二塁へ進んだ。

 最終打者に対しては少しリラックスして投球し、遊撃方向へのゴロとなるが、ここでもエラーで走者が溜まる。

 ラッキーセブンにもかかわらずここまで運が悪いとなると七尾も少し焦りが見え始めるが、投手コーチがマウンドへ向かい七尾を鼓舞する。

 七尾も落ち着き始め、一死一塁、三塁から試合が再開される。

 一番打者は本塁打も打てる中距離打者であるが、巧みな投球術で三振を取ることができた。

 続く二番打者には死球を与えてしまい、二死満塁で本塁打が出ると逆転される場面である。

 投手交代されてもおかしくない状況であるが、幾度のピンチを抑えた七尾にすべてを託すベンチ。

 二番打者を一球で外野飛球に打ち取ったと思いそっちを見た。

 小さい白球は無情にも本塁打ラッキーゾーンという少し前に出た部分に落下した。

 チームは逆転され、先発投手の勝ちの権利は無くなり、七尾は負け投手。

 七尾にとってアンラッキーが重なった七回であった。

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