とにかく会いたいっ!

@Nekosuuki

第1話

(僕は恵まれていると思う、、、)

お母さんもお父さんも愛情を注いでくれて

妹も、姉さんも、僕を大事にしてくれている


だからそんな家族のことが好きだ

僕には家族しかいないから、、、


「なんで服きてないの!?姉さん!」

「えー?だって暑いしめんどくさいじゃん?」

「いいから早く着てくれ!」


めんどくさいと言わんばかりの目を向けられつつも服を指さす、アヤメは「はぁ」と言いつつ洗面台に戻っていく、朝1番から男としては

嬉しいような疲れるような場面に遭遇したのも束の間、2階から叫び声が聞こえてくる。


「助けてぇ!お兄ちゃーーん!」

今度はなんだと2階に少し駆け足で階段を上り

ひなの部屋の方に目を向ける、

すると部屋のドアの前で腰を抜かしている

ひなが見えた、早く学校に行く支度を

したいのだが流石に目の前で腰を抜かしている

妹を放置は出来ない。


「どうしたんだ?」

そう言いつつ部屋の方に目をやる、

そして視界に捉えた物ですぐに理解した

この状況は自分ではどうしようもないと、

とはいえこんな妹を見捨てることも出来ず

そっと扉を閉じて2人で現実逃避をして

1階のリビングに戻った。


「朝からみんな元気ねぇ」

頬に手を当てこの世の平和を詰め込んだ

ような笑顔でそういう母に父も面白がっていた

「そうだなぁゆうきもとうとう高校生か!」

「お友達出来たらいいわね〜」


そう言いながら両親は朝食を食べていた

「僕はもう疲れたよ、、、今から入学式だっていうのに」

疲れたのは事実だが心地の良い疲れだった

ゆうきも朝食を食べようとイスに座る

ひなもいつもならゆうきが食べ終わったくらいに

降りてくるのだが奴に部屋を占領されて

いるため大人しく席についた、

隣に座ったひなの頭を撫でつつ

トーストを口にする、ひなは頭を撫でられて

落ち着いたのか次第に笑顔が戻っていった

しばらくして髪を乾かして服を着終えた

姉が朝食を食べに来た、

「あれ?あんたまだ居たの」

「え?」

「いや、、、入学式って確かあと1時間後

じゃなかった?」

「あ、、、」

そう、朝から怒涛の勢いでハプニングが重なったせいで時間感覚がズレてしまっていたのだが本来ならもう駅に向かって歩いてないと行けない時間だった。

「お姉さん、、、」

「いやだ」

「まだ何もいってない!」

「どうせ車で乗せて行けとかいうんでしょ?」

「う、、、」

図星だった、今から自転車で行ったんじゃ

確実に遅れてしまう、入学初日から遅刻

ラノベの主人公なら定番だがあいにく

リアルではシャレにならないハプニングだ

ましてやゆうきでは尚更だ、、、

「1ヶ月分、、、」

「なんてー?」

「1ヶ月分のお小遣い!お姉さんにあげるから!

だから乗せてってください!!!!!」

「よかろう!」

にやにやと笑いながら頭を撫でてくる姉に

少し照れつつ支度を済ますために部屋に戻る


(今日から学校か、、、)

内心穏やかではなかった、中学までは別の街に

住んでいたのだがとある事情で家族総出で

この街に引っ越してきたのだ、

遠く離れたこの街に。


「ゆうきー?準備できたー?」

玄関で姉が車の準備を済まして呼んでいる


「 お願いだから安全運転でお願いします。」


ゆうきには1つ懸念点があった、それは

アヤメの運転はとても荒いのだ、

本人いわく「人様の迷惑にならん程度だから

大丈夫!」との事、

だがやはり乗っている側としては

そこそこ、いや凄く怖い、特に自分の命の主導権を他人が握っているのが凄く怖い、

とはいえ乗せてもらう立場なのであまり文句も

言えない。


「姉さん!?ちょっとスピード早くない!?」

「まったくビビり過ぎだ!」

「ちょっ!ちょっと待ってくれぇぇぇぇぇ!」


開会式の20分前に着いたのはいいのだが

ゆうきは既にボロボロだった


「わざわざ学校までありがとう、、、」

「そういう割には顔が真逆の顔になってのよ」

「、、、感謝はしてる」

そう、感謝はしているのだがそれ以上に

後悔が上回っていた。


「じゃあ私は行くわ」

「うん」

「無理しなくていいからね、いざとなれば私が

ガツンとやってやるわ」

「ありがとう」


姉も姉なりに思うことがあるのだろうが

多くは言わなかった

「じゃあ、、行ってらっしゃい!」

弟の自分でも危うく可愛いとこぼしそうになる

笑顔でそう言ってくる姉にはいはいと手を振って教室に向かう、

クラスは予めネットで送られているので

あとは地図どうりに向かうだけだ、


「1ー4、、、ここか」

県内でもそこそこ大きい学校なので

少し時間はかかったが時間はまだセーフ

だった、ゆうきは自分の席を見つけると

やっと一息つけると座った。

得にすることもないので

教室にいる人達を怪しまれない程度に眺めていた、すると隣の席の女子が話しかけてきた、

「ねえ、」

「は、はい」

「ヘッドホン見なかった?」

「へ、ヘッドホン?」

「そう、青と黒のかっこいい感じの」

「いや、見なかったけど落し物?」

「うん、どこで落としたのか分からなくて、、」

(そんなことあるの!?てか、

ヘッドホン落とすってなんだ!?)


ゆうきは心の中でツッコミつつ話を聞く、


「さっきバスまではあったから、多分学校の

中で落としたんだと思う、」


「、、、!?」

「どうしたの?変な顔して、、」

「いや、、その、、」

「なに?」

「その首につけてるのは違うんですよね?」


ゆうきに言われて首元に手をやって

次第にほわほわと顔が赤くなっていく

ゆうきは察した、

(あ、この子少し天然か?)


「今、天然って思ったでしょ」

「い、いや?」

「それは思ってる人の反応!」

「いや、まあ、、可愛いと思いますよ?」


これがゆうきにできるせめてものフォローだった、今まで同世代の女子の友達がいなかった

ゆうきにとって思いつく限りのフォローだった

少女は赤くなった顔を隠すように俯いた

「ずるい、、、」

「ずっ!?すみません、、、」

「いい、別に怒ってるわけじゃない、、今日から

隣の席、よろしく、、、」

「よ、よろしくお願いします、、、」


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