第39話 16時17分 横槍
「――なッ!! なんで……ぬがぁああ――ッ!!」
ソファーの上から背後へ倒れ込む。
僕がガレットへ視線を向けると、ガレットは軍手を付けた手をワキワキと僕に見せつけていた。
「そういう使い方もできるのか……助かったよ……」
「考えてたわけじゃないけど……咄嗟だったから……」
僕は立ち上がろうとするとかなり痛みがあるが、歩けないほどではない。
ガレットも立ち上がり軍手と共にマシンガンを捨てていた。
「ちょうど……撃ち切っちゃった……」
ガレットが僕に向けて頬を緩めた。
その時。
「――なら俺の逆転勝ちだなァー!!」
仰向けで倒れていた特殊部隊が背腰に手を回しながら起き上がった。
銃弾が当たった部分はアバターで隠れているがたしかに出血エフェクトは見えないことに気が付く。エフェクトは弾が掠めた腕や足部分だけだ。
集中砲火を食らったのは胴体なのになぜ――
手を振り上げた特殊部隊が握るはハンドガン。
咄嗟にガレットがしゃがんで発砲を避けるが、この近距離では逃げ切ることは不可能だ。
だから――
「――うおおおお――ッ!!」
僕は丸腰のまま特殊部隊に向かって跳び込んだ。
「軍手もなしに自殺願望か? ならお前から――ぎっ!!! ぎぎゃぁぁっぁぁ!!!」
僕は無策で飛び込んだわけじゃない。
ガレットに体を向けた
微かに指先が触れた瞬間、特殊部隊の体が跳ね上がた。
ガレットはその隙を見逃さず、ポーチに手を伸ばし、最後のハンドガンを取り出そうとしている。
痙攣と共にゆっくり後ろに倒れ込む特殊部隊に巻き込まれないように、僕が横に転がっていった時……
重々しい銃声がエントランスに鳴り響いた。
「―――――ッ!!」
銃声は近場ではない。
僕とガレットは伏せながら2階のラウンジに目を向ける。
そこに銃身から硝煙を上げる狙撃銃を構えたロリパンダの姿があった。
「ソファーの影へ!!」
2発3発……と続けざまに響く銃声。
僕たちを物陰に貼り付けるように牽制しては、次弾の銃声と共に倒れている特殊部隊の体が跳ねる。
そして……特殊部隊の頭が割れ、赤黒い液体と共に桃色の臓器が飛び散ったことを確認すると銃声が止み、ロリパンダの姿もラウンジの奥へと消えていった。
「いつから狙ってたんだ……」
「気が付かなかった……厄介な
ガレットに2階を警戒してもらいつつ、懐を探る。
というよりもショットガンの跡っぽいので、特殊部隊が殺した時点でこの状態だったのだろう。
さらに探ると先ほどの不可解な事象に説明がつくモノを発見する。
特殊部隊は防弾チョッキを着ていたんだ。
あまり死体に触れたくはないが、これは貴重だ。
僕は防弾チョッキを脱がせると、特殊部隊のハンドガンと合わせてガレットに差し出した。
「いいの……?」
「何度も命を救われてるからね。残りはあいつだけなのか分からないけど、こうなったら最後まで頑張ろう」
ガレットが軽く頷き、僕も頬を緩ませる。
「まずは吹き抜けから死角の位置に動こう」
僕とガレットは壁際にある受付カウンターへと向かった。
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