パーティ名はアンラッキー7

野林緑里

第1話

 冒険者は基本的にパーティをくんで行動することになっている。パーティ名はある程度ランクが上になれば、自由に決めて良いのだが、ランクがもっとも低いまだ成り立てホヤホヤのパーティーには、ギルド側からパーティー名が提供されることになっているのだ。


 いわゆる仮のパーティということになる。


 ただそのギルドから提供されたパーティ名というものは正直いってだれもが納得いくものではない。いやむしろ、それはないだろうというものが多く、早くレベルをあげて改名しようとする冒険者は当然のことく少なくはない。


 それなのに、そのパーティはランクAにも関わらず、ギルドから提供されたパーティ名を名乗り続けている。


 そんなある日、別のパーティの冒険者が尋ねた。



「なあ。お前たちはなんで改名しないんだ?」


 するとパーティのリーダーらしき男がなぜか勝ち誇ったような顔でこういう。


「なにをいうか、アンラッキーなんていかしたネーミングではないか。逆に縁起がいい」


 そういうことらしい。


 縁起が良いのか。


 アンラッキーだぞ。


 ラッキーではなくて、アンラッキー。


 冒険者は納得いかないような顔をする。


「まあ、ギルドのつける名前ってのは、そのときの冒険者の状況を見てつけてんだよね。俺たちはさ。7人とも冒険者になる前は本当にアンラッキーなことが続いてたんだよ。だから、アンラッキーな人たちが7人ってことでアンラッキー7なんてネーミングつけられたわけ。まあ、最初は不満はあったさ。だけど、よく考えたらいままでのアンラッキーがあったからこそいま俺たちがいるんだ。ならさ、いままでアンラッキーをバネに前に進めるじゃねえか。だから、俺たちはこれからもアンラッキー7でがんばるのさ」


 そんなふうに説明されるがどうも納得できない。


 どうせならラッキー7でいいじゃないかと思わずにはいられない。


「それと、おまえらの名前よりはましだし」


「はあ?」


 その言葉に冒険者は顔を歪める。


「俺たちは好きでそんな名前名乗っているんじゃない! ギルドが勝手に決めたんだよ」


「わかっているさ」


 そのパーティアンラッキー7のリーダーは冒険者の肩をポンポンとたたく。


「じゃあ、お前らが自由に名前をつけられるようになったらラッキー7と名乗ればいい」


「いやなこっちゃ。もっとかっこいい名前名乗るさ」


「そっか。じゃあ頑張れよ。“史上最弱”のキイ」


 そういってアンラッキー7のリーダーは仲間のもとへといってしまった。


 その背中を見ながら、がんばってランクをあげてかっこいい名前を付け直すことを改めて決意するキイであった。








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パーティ名はアンラッキー7 野林緑里 @gswolf0718

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