ダンジョンマスターに転生しましたので、麗しの魔王様に尽くします!

ねこ沢ふたよ

第1話 ダンジョンは、魔王様のためにあるのです!

 ひょんなことから、サクサク転生! 素晴らしい!

 前世では進撃のモブ・KING OF MOBU を自称していた俺に、この『転生』なんてイベントが回ってくるなんて!

 

 俺が転生したのは、ダンジョンマスター。魔王様を守るために城をダンジョン化するのが、俺の仕事だ。

 魔王スターシャ様は、絶世の美女。その美女を守る要となる城を俺が造るのだ。


 本日も、心を込めて、伊賀の忍者屋敷のように隠し扉、絵画の裏の通路なんかを魔法を駆使して設置する。

 ああ、勇者が来た時に、絶対ここで壁にもたれたくなるよな? じゃあ、この壁は回転して牢獄に繋がるように仕掛けておくか……まてよ? いっそゴブリンの控の間に繋げて、HPの切れかけた勇者を混乱に落とし入れるのはどうだ?


 楽しくウキウキと仕掛けを講じていると、魔王スターシャ様が姿をお見せになる。


「本日もご機嫌麗しゅう。凍てつく夜の満月よりも冴え冴えとした美しさ、本日もご尊顔を拝謁できまして恐悦至極でございます」

俺は、うやうやしく拝礼して、スターシャ様のお言葉を待つ。


「……あまり難しくしないでやってくれないか? その……もっと、私の部屋に向かうヒントをちりばめるとか、そうだ! あそこの壁にもたれたら、そのまま魔王の間に続くとかはどうじゃ?」


「はぁ。しかし、そのようなことをすれば、スターシャ様の身に危険が及びます。ここは、さらに難易度をあげるほ……ああ、ひょっとして、スターシャ様、この間観た勇者の姿にちょっと心ときめいておしまいに?」


「そ、そんなことは……ちょっとだけ……ある……ようなないような……」

もじもじする美女。可愛いな。

 

 なるほど、そういう事情なら、話は変わってくる。

 じゃあ、この仕掛けだ。

 俺は、スターシャ様の恋を応援するべく『アンラッキーセブン』の魔法を、例のもたれたくなるような壁にめり込ませておいた。


 勇者は、あっさりと壁にもたれて、『アンラッキーセブン』を発動させてしまう。

 

 『アンラッキーセブン』これは、人類にとっては恐怖の魔法。我々魔族にとっては幸運の魔法。傲慢・強欲・嫉妬・憤怒・色欲・暴食・怠惰の七つの大罪を司る精霊がよみがえる魔法。

 発動させてしまった人物が高潔であればあるほど、その効き目は強い。

 命がけで魔王に挑むような清廉な勇者が発動したのだから、もはや人類も魔族もその境目が分からなくなるくらいに精霊は世界に広がっていった。


 こうなればもう、魔王を滅ぼすことは、無意味になる。だって、もはや、魔族と人間に境など無いのだから。

 自らの失敗に落胆する勇者。それを魔王スターシャ様が、真心を込めて慰めた。


 仲良く魔王城を散策二人を、俺は、本日も温かい目で見守る。

 さあ、本日も忙しく働こう。

 あの、初心な二人の距離が縮むように、ラッキーハプニングが起こる仕掛けを考え出さなくては!!


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ダンジョンマスターに転生しましたので、麗しの魔王様に尽くします! ねこ沢ふたよ @futayo

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