777円
だら子
第1話
「みなさん、よく聞いてください」
スーパで店内放送が聞こえる。
どこで誰が話しているかわからない。
混んでいるにも関わらず、みな立ち止まり真剣に話を聞く。
異様だ。
子どもはいない。
20代前後の大人だけ。
色鮮やかや野菜、新鮮な魚もただのモノに見えた。
声は響く。
「このスーパーで777円の買い物をすること。
もちろん税込です。制限時間は7分。うまく買えなければ、即死です。では…」
バンと銃声が聞こえると同時に、太った髪の長い女性が倒れた。
「話は最後まで聞くこと。今からカウントダウンして、『はじめ』と言われたら買い物をしてください。3、2、1、はじめ!」
命をかけたゲームを始める。
最初に手にしたのはお弁当。480円。
野菜コーナーからできていた人だかりを避け、左から回った。
人間は習性で、右まわりで買い物したくなるのかもしれない。
栄養士が考えたお弁当。
実家の母親を思い出す。
「あんたちゃんと食べてるの?」
料理する時間もないほど、打ち込んでいた仕事。
そんな仕事も、できなくなるかも。
次に135円の発泡酒を手にする。このビールは私の大好物だ。
第三ビールより高いけれど、スーパではコンビニより少し安く買える。
このビールに何度助けられたことか。
残り162円。
もう何も考えられなかった。いくら時間が過ぎたのだろう。
私は、パンコーナーでチョコレートパイを見つける。
取ろうとした瞬間。手が重なった。
長身のイケメンだった。メガネをかけ短髪
タイプだ。
「どうぞ」
私は、人生で一番可愛らしい声を出す。
いったん下がったのち、私は持っていたナイフで
彼を突き刺す。
「このチョコパイが必要なんだよ」
私は血の海で転びそうになりながらも、レジへダッシュする。
「どうぞ〜」
レジのお姉さんは呑気。
その瞬間、商品は誰かに奪われていた。
鈍器って、ドンって脳内で音がするから 鈍器なのかな。
今、頭どうなってるんだろ。
777円 だら子 @darako
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