苦い思い出

熊のぬい

今日の私は、ついてないらしい。



朝目覚めて、デジタル時計を確認する。7時59分。いつもアラームを掛けている時間は7時。家を出る時間は8時10分。

時計が8時になり、寝起きの頭がようやく時間を認識した。


「ぎゃ!」


まるでひき殺された猫のような悲鳴を上げて急いでスマホをつけようとした。しかし、スマホはうんともすんともしなかった。昨日、充電を忘れて、電源が切れてアラームが鳴らなかったみたいだ。

それから、天気予報を見ようと、つけたテレビで朝の星座占いは12位と映し出される。


『残念なことが起こるかも。

うっかりな事に気を付けて!

そんなアナタのラッキーアイテムは、ホットな缶コーヒー!

アンラッキーナンバーは7!!』


この夏に、ホットコーヒーとは?地獄では?

そんな胡散臭い占いにうんざりして、テレビを消した。


朝支度が済むまでの間、スマホの充電をしようと充電器につなぐ。

顔を洗って、髪を解かし、服を着替える。朝ごはんは作ってられないので、適当に小さなヨーグルトを食べて我慢する。


スマホを確認すると、7パーセントしか溜まっていない。

しかし、もう家を出ないと電車に乗り遅れる。

私は充電器からスマホを引き抜き、鞄に突っ込んで家を出た。

運動靴で通学路を突っ走る。


はぁはぁと肩で息をしながら、駅に着いた。

通勤ラッシュで周りには大勢の人の中に、私はふぅと息を吐き呼吸を整えて、入っていく。

順調に改札を抜けて、電車を待つ。

予定通りに到着した電車に乗り込み、当然、座席に座れる事などなく、人ごみに潰される。せめてドア側が良かった。

駅メロが流れて電車が発車し、全体がガタガタと揺れ始める。

他人の体温を感じる距離に気持ち悪いなと思いながら、間に合って良かったとホッとする。


しかし、安心したのも束の間、電車は急停止した。その後、1時間10分の遅れで目的の駅に着いた。

遅延の理由は人身事故らしい。こんな朝早くに止めて欲しいと、私は恨みがましく、その人を思った。

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