アンラッキーはラッキーの前触れ【BL】

大竹あやめ@電子書籍化進行中

第1話

 最悪だ。俺は土砂降りの雨を店内から眺めてそう思う。


『いて座の今日のラッキーアイテムは……数字の7が付いたTシャツ!』


 今朝のワイドショーでやってた占いの言葉がよみがえる。ほんと、何やってんだろ、俺。


 そんなピンポイントなTシャツある訳ないだろって思うだろ? けど、今日のアイテムは偶然にもあったんだ。そして、普段占いなんか信じない俺が、なぜか着てみようと思って、『7』Tシャツで一日を過ごしたんだ。


 そしたら、朝からオーブントースターが故障し買い換える羽目になり、姉貴から子供を見てくれと突然頼まれ、子供らにあちこち連れ回された。やっと帰ったと思って、掃除をしてたら掃除機のコードで足を引っ掛け盛大に転び、絶賛再生栽培中の豆苗をひっくり返した。


 何がラッキーアイテムだ、こんなにアンラッキーが重なってるじゃないかふざけんな、と夕食の買い物に出てみれば、目の前で最後のひとつのもやしが取られ、欲しかった肉も売り切れ。仕方なくカップラーメンとチューハイをカゴに突っ込み、無事に買い物を済ませられたと思ったらこれだ。


 来る時は晴れてたのに、まさかの土砂降り。ついてない……今日はとことんついてない。


 傘は持ってきていないし、濡れて帰る気力もない。かといって、いつ止むか分からない雨を待つのもなあ、と考えていると、声を掛けられた。


「あ、あの……よかったら、傘、使ってください」


 見るとそこには、照れているのか黒髪をいじりながら、俯いて傘を突き出している子がいる。


 運命だと思った。


 今日のアンラッキーは、この子に出会うためにあったんじゃないかと思うほど。どう見ても男だったけど、男とか女とか、どうでもいいと思うほどかわいい子だった。


 俺はその子の傘を、その子の手ごと、ガシッと掴む。


「傘を借りるだけなのは申し訳ないので、家まで送ります!」


 するとその子ははにかんだように笑って、頷いた。



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