「7」が世界を滅ぼす日

二晩占二

「7」が人類を滅ぼす日

 朝から土砂降りの「7」が降った日のことだった。

 T駅近郊のマンションの屋上から若者が飛び降りて死んだ。靴と一緒に添えられた遺書には「7」とだけ書き残されていた。


 このマンションの最上階に、ひとりの老婆が棲んでいた。老婆は若者が地面に打ち付けられる音を聞くと、窓から顔を出して下を覗き込んだ。

 その拍子に、降ってきた「7」が老婆の後頭部に突き刺さって死んだ。

 老婆の口から入れ歯代わりに使っていた「7」がこぼれ落ちた。


 ひとつ下の階のマダムはその時、たまたまテラスで植木に水をやっていた。

 まだまだ「7」は止みそうにないわねぇ。

 そんなセリフを呟きながら空を見上げた途端、老婆の口から落ちた「7」が眼球を貫いて死んだ。


 卒倒した彼女の手からジョウロが飛んだ。

 ジョウロの中に満たされていた「7」が、宙空をくるくるとスプリンクラーのように撒き散らされた。


 下の階に棲む男性は徹夜あけで風呂に入っていた。

 ジョウロが撒き散らす「7」が浴槽の湯に溶け込んでいるのに気づかなかった。

 それで、男性も死んでしまった。


 こんなふうに日本中で「7」死が多発したので、政府は「7」に対する特別警報を発令した。

 ここまで強烈な「7」な過去に類を見なかった。

 学校は休校になり、仕事も早退する者が続出したが、「7」の勢いは収まることを知らなかった。


 屋内に潜んでいたからといって、安全だとは限らなかったのだ。

 屋根を突き破って「7」は降る。

 壁をすり抜けて「7」は噛む。

 床を這って「7」は締める。


 そうやって「7」は人々の生活を侵食し続けた。


 地球の生態系ピラミッドの頂点に「7」が君臨するまで、そう時間はかからなかった。

「7」たちは協力しあい、科学を発展させ、豊かな社会を作っていった。


 そして今日、ついに「7」たちは歴史的転換点を迎える。

「7」の中の精鋭「7」たちによって結成された「7」チームが開発していた宇宙船「7」号が、ついに出発の日を迎えたのだ。

 今後、「7」たちの侵食は、宇宙規模にまで広がっていくことだろう。


 銀河の歴史が、また1ページ。

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「7」が世界を滅ぼす日 二晩占二 @niban_senji

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