777個の不幸の後に

猫兎彩愛

第1話

「はぁぁぁ……」


 大きな溜め息が出てしまう。今日もまたついていない……


 この一年間、俺の毎日は不幸の連続だった。


 不幸と言っても小さな事が立て続けに起きているってだけなんだけど……


 例えば、買ったばかりのものが次の日半額で売られてる、とか、電車が目の前で閉まるとか、行列に並んで目の前で売り切れるとか、悪くないのに先生に叱られる、タンスの角で小指をぶつけた後に、買ったばかりのスマホをポケットから落として画面が割れる……


 言い出したらキリがない。


 けど、今日のは堪えたな……


 付き合ってた大好きな彼女が浮気してた。信じてたのに。こればっかりはいつもの小さな不幸で片付けられない……


 乗り越えられそうにない……


 俺はいつも通る通学路を肩を落としながら歩いていた。


「少年!」


 ん? 少年って、俺の事?


 何だろうと思い、後ろを振り向くと、怪しい人が立っていた。


 透き通るような白い髪と肌をした男性? が、黒色のローブの様なものを着て、街頭の下に立っている。


 怖い。


 不幸が続いていた俺は、これも悪いことに違いないと、警戒する。

 何も見なかった事にして、この場を去ろうと後退りをすると、いつの間にか男が真横に来ていた。


「うわぁ!」


 ドンッと、俺は驚いて尻餅をついてしまった。

 その見知らぬ男性は尻餅をついてしまった俺にお構いなしに話し出す。


「少年、良く聞け。君は今年に入ってから今まで777個の不幸……所謂いわゆるアンラッキーにあった。しかし、今までのは……これから起こるアンラッキー7の序章に過ぎない」


 は? 何言っているんだこいつ? って、777個って、アンラッキー7って何だよ。俺

 、一年でそんなに不幸なことあったのか……?


「いきなり出てきて何ですか? あなたは誰ですか? アンラッキー7って……」


「誰……か。神とでも言っておこう。アンラッキー7とはな、これまでの不幸と比べ物にならない不幸な事が7回続く、ということだ。このままでは、君は今から来るこの不幸に耐えられないと思ってな。助言に来たまでだ。実際、アンラッキー7が始まって一つ目の不幸、彼女の浮気が分かっただけで、この落ち込み様だからな」


 神……? そんな者が居るのか? いや、そんな事より、不幸がまだ続く? しかも、比べ物にならない程の……? 


って、何で彼女に裏切られた事を知ってんだよ。もしかして、本当に……?


凄く不安になってきた。


「あの……どうすれば良いですか?」


俺は神とやらに聞いてみる。


「どうすれば良いかは自分で考えろ。でなければ乗り越えられまい。何、案ずるな。誰もが皆こういう事がある」


 何も教えてはもらえないのか……助言をもらっただけでも感謝すべきなのかな……


俺は目の前の『神』を信じることにした。


「そう、ですか。あの……それで、神? 様は何故、僕に助言を?」


「まぁ……なんだ。気紛れだ気にするな。頑張れよ」


気紛れ……か。これに関してはラッキーと思って良いのかな。神様って言ってるし、お礼は言わないと。


「有り難うございます」


俺がペコっと、頭を下げると、神様は少し微笑み、


「忘れるな、案ずるな。乗り越えろ」


 そう言うと、神様らしき男性は消えた。


 消えた……ホントに神様だったのかな……


 俺はこれから起こるであろう不幸に不安になりながらも、神様に感謝するのだった。



 ……アンラッキー7、乗り越えた先には幸せが待っている。頑張れよしょう


 おじいちゃんはずっと、お前を見守っているからな……

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777個の不幸の後に 猫兎彩愛 @misausa03

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