不運なラッキーセブン

@nekobatake

7桁のID

 7桁のIDナンバーの照合が、0.07秒で終了した。あまりの処理速度の遅さに今度こそアタリを引いたと期待したが、今回もハズレだった。


「ちっ」


 26文字に数字を10種加えて36。36の7乗。約780万。小さな数だが、実際に手を動かして探すとなると気が遠くなる。


「あれー? ハズレ?」

「アタリなら飛び上がって喜んでやるよ」


 ナナに返事をして、おれは骸機から取り出したコアを放り投げた。


「まー、まだ10……ええと、じゅうさん台? しか調べてないし」

「12。なんで機械が不正確なんだよ」


 えへへ、とポンコツAIロボが人間の少女の笑みを浮かべる。見た目だけは、完全に見分けがつかない。腐っても変態向け高級セクサロイドというわけだ。……見た目だけは。


「まー、わたしちゃん、戦闘特化型ですしー? 見た目じゃわかりにくいけど!」

「はっ、誰がテメエも骸機だって分かんだよ」


 AIによって開発された子AI、その子AIが更にAIを……と7世代を経た最新AIは人類の制御を離れ、人類駆逐用規格のハードウェアを開発した。それを『骸機』と呼ぶ。


「まー、しゃーなし。やっぱアタリはわたしちゃんみたいな見た目なのかねー?」

「だとしたら面倒くせえな。判別機を作るか」


 骸機と知られぬまま闇に葬られようとしていた骸機──特殊骸機ID:7777777のナナと廃棄場で出会ったのは幸運だった。

 お互いに処分寸前に命拾いしたことも。

 お互いの目的が一致したのも。

 どれも偶然とは思えない幸運だった。


 ナナの不完全なコアの片割れを求めて、俺たちは骸機狩りをしている。

 ナナが完全体になれば、最強になる。元技術者の俺には分かる。


「いいねー。まーとりあえず、次の獲物探そー。骸機抹殺のために!」

「ああ、人類抹殺のために!」


 おれたちはおれたちを疎外した自らの種への復讐のため、旅を続ける。

 最高に不運なラッキーセブンに出会える日まで。


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