筋肉太郎
マフユフミ
第1話
むかーしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
ある日、おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。
おばあさんが洗濯をしていると、川上から大きな筋肉がどんぶらこ、どんぶらこ、と流れてくるではありませんか。
「まあ、立派な筋肉だこと」
おばあさんはその筋肉を拾い上げ、家に持って帰ることにしました。
夕方になり、おじいさんが家に帰ってきます。
「どうしたんだこれは」
ちゃぶ台に乗っているのは、どこからどう見ても立派な筋肉です。
「川から流れてきたんですよ」
「これはすごい。しっかり堪能するとしよう」
おじいさんとおばあさんは、筋肉の張りやら弾力やらをその手でしっかり確かめます。
もぎゅもぎゅ、もぎゅもぎゅ。
二人が我を忘れて揉みしだいていたとき。
パッカーーーン!!
筋肉と筋肉のハザマから、元気な男の子が飛び出してきました。
「おおなんと、元気じゃな」
「神の恵みかもしれません」
「筋肉から生まれてきたので、筋肉太郎と名付けよう」
こうして男の子は、おじいさんとおばあさんに大切に育てられることになったのです。
筋肉太郎は、すくすくすくすく育ちました。
その胸筋は随意運動の極み、その腕は町一番の上腕二頭筋と呼ばれるほどのマッチョとなっていったのです。
そんなある日、筋肉太郎は近くの島で鬼が大暴れしているという噂を聞きつけました。
「おじいさんおばあさん、僕、鬼退治に行こうと思います」
「分かったよ、じゃあこれを持ってお行き」
おばあさんは筋肉太郎に新鮮なプロテインを持たせました。
「ありがとうございます。行ってきます」
「気を付けていくんじゃよ」
おじいさんとおばあさんに別れを告げ、筋肉太郎は鬼が待つ鬼ヶ島へと歩き始めます。
その途中で。
「筋肉太郎さん、筋肉太郎さん」
犬が声をかけてきます。
「お腰につけたプロテイン、一つ私にくださいな」
「あげましょうあげましょう。むせてはいけないのでこのお水に溶かして飲みなさい」
筋肉太郎は犬にプロテインを分けてあげ、犬はぱつんぱつんの太ももを手に入れました。
同じように猿と雉が声をかけてプロテインをもらい、猿はバッキバキの腹筋を、雉はぐっと盛り上がる背筋を手に入れました。
こうしてムキムキになった筋肉太郎と犬、猿、雉は、鬼ヶ島へとたどりついたのです。
島では鬼がうおーうおーと唸り声をあげて大暴れしています。
「よし、行くぞ!」
「おー!!」
筋肉太郎が声をかけると、犬、猿、雉がいっせいに鬼に向かってとびかかっていきました。
バキッ、ボキャッ、ドゴっ。
それぞれが赤鬼、青鬼、黄鬼を一発で仕留めました。そして。
「失せろ」
筋肉太郎がそれぞれに一発ずつパンチを入れ、鬼は完全に動かなくなったのです。
それから筋肉太郎は犬、猿、雉とともにおじいさんおばあさんの元へと帰り、筋トレだけは毎日欠かさず幸せに暮らしましたとさ。
おしまい。
筋肉太郎 マフユフミ @winterday
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます