サンタ市民病院

七星剣 蓮

第1話完結 令和11年11月11日新サンタ市民病院開院

 注、この話はフィクションであり、実在するいかなる自治体、団体、個人その他とは一切関係ありません。

  

 ここは兵庫県サンタ市、カンベ市北区から少し北に行ったところにある人口11万人の都市だ。

 そのJ-west鉄道のnewサンタ駅の駅前に新しい巨大医療センター、新サンタ市民病院がオープンする。


 それは旧サンタ市民病院から連節する形でnewサンタ駅まで直結し、市営駐車場を併設、1000台の車を収容することもできるものだ。

 駅からの遊歩道脇には有名な星影珈琲店があり、駅前の旧市営駐車場ビルを建て替えた商業施設から雨に濡れずにアクセスすることができる。

 新サンタ病院は以前の医師、看護師不足を解決するためにカンベ市のナデシコ兵庫県病院と統合されていまの場所に建てられた。

 当時日本の人口減少その他の要因により民間病院に高い給与で引き抜かれる事態が相次ぎ、一時期は一部の病棟を閉鎖しなくてはならない事態に陥ったという。

 市民病院である以上、職員の給与を機動的に上げることも叶わず、職員の使命感だけを頼りにするのももう限界であった。

 そこで巨大医療センターに格上げしようという話が持ち上がったわけだ。


 医師、特に若い医師は経験の積める大規模病院を希望する傾向が高く、中規模病院以下にはなかなか給与だけでは集めることが困難というわけだ。

 カンベ大学病院から医師を派遣してもらってなんとかやりくりしてきたがもう限界である。

 このままでは救命救急病院の機能すら維持困難になりかねない。


 そこで前出のナデシコ病院との統合という話になったわけだ。


 しかしそううまい話ばかりではない。

 

 両病院はそれぞれカンベ市北区とサンタ市にあり、どちらに偏っても不満が出るだろう。

 当初は両方の病院からほぼ同じ距離にある場所を買収してその場所に建設することになっていたが、これには当然双方から苛烈な反対意見が出されている。

 特に建設費用を負担するのがサンタ市というのであれば尚のことである。

 関係者は送迎バスを出すという案も提示したが、大きな幹線沿いとはいえ鉄道から遠い、交通の便の悪い場所では免許を返納した高齢者などは双方たまったものではない。

 

 そこで出されたのがJ-west newサンタ駅に直結させる案である。

 もともと以前のサンタ市長が田園都市のイメージを守りたいために市街化調整区域としたことで一日5万人が乗降する駅にもかかわらず駅前に無いもない閑散駅となっていた。

 その後、少しずつ市街化調整区域を外していき、国道沿いにロータリーを建設するなど開発がすすんでいる。


 またその少し前には外資系の星影珈琲店がオープンするにおよび、やっと駅前らしくなってきたのである。


 ここで浮上したのがサンタ市民病院のnewサンタ駅直結案である。


 まず、駅の一等地に建設されている市営の駐輪駐車場、常識的には商業施設が入るべき場所である。

 これを取り壊して核となるスーパーないしモールを誘致し、アーケードで駅と雨に濡れない歩道で直結する。


 その後、星影珈琲店の脇に同じくアーケードを通して川(アーナセルリバー)を渡った場所(元田畑)を買収して6階建ての新サンタ市民病院本館を建設するのである。


 一級河川のアーナセルリバーの川沿いであるので一階は万一の氾濫に備えて重要施設は設置せず、雨に濡れない簡易遊園地や桜並木を眺めることができるスペースとすれば良いだろう。

 

 隣のスペースには自動車1000台を収容できるサンタ市営駐車場を併設し、病院2階には調剤薬局を運営するドラッグストアなどが入居、もしくは問題あるなら調剤薬局のヤンググラスファーマシーを入れて個別の地元企業を誘致してもいいだろう。


 新館6階からは旧サンタ市民病院の一階に連結する渡り廊下を設置、旧館は入院病棟やリハビリ病棟などとすれば良いだろう。


 旧館はとにかく駐車場が狭く、二階の救急車ロータリーが極端に狭く、救急車が二台くればもう完全に通行が塞がれてしまう。

 もはやまともに機能してないのだ。


 駐車場が狭く遠いため、迎えの自動車が一階ロータリーを占拠し、路線バスの通行を妨げ、タクシー待機場所に平気で駐車すると言ったら惨状である。

 そのまま現状維持というのもかなり困難なのだ。


 話が脱線したが、それに比べて新館は素晴らしい基幹病院となっている。

 外観は田園都市の雰囲気に配慮し、赤レンガタイルなどを多用して明治から大正時代の様相を呈し、ただ一歩入ると最新鋭設備が整った先端医療を受けられる巨大病院なのだ。

 

 カンベ市民側から苦情が多く出るものと思ったが、もともとのナデシコ病院もカンベ電鉄のマウントフィールド駅からかなり坂を登った場所にあり、どのみち今の場所から移転するなら駅直結の病院ということで納得がしやすかったのだ。


 もちろんナデシコ病院の徒歩圏内に住む方からは苦情が出るのは当然なのだが。


 新サンタ市民病院にはほとんど全ての科が揃っている。


 特に産婦人科の医師獲得に力を入れたため人口当たりの産婦人科医数は近畿トップとなり子供を産み育てやすい環境となった。


 これからは摂丹地域の拠点病院として活躍することとなる。


 なお、新館二階にはカンベ大学のサテライトキャンパスが併設されており、サンタ市で医師を目指す若者が多く利用することになる。

 地元から医師になった若い医学生はまたサンタ市にUターンしてもらえる可能性も高いからだ。


 新サンタ市民病院はこんな将来を描いている。


 

 

 


 

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