第213話

 軽く微笑み家に誘えば、誰も断らなかった。

 裸になれと言えばなり、写真を撮るのも簡単で、あまりにつまらなかった。

 清志郎は誰も犯したことがなかった。

 犯せなかった、と言った方が正しいかもしれない。

 清志郎には精通がなかった。

 幼少期にショッキングな経験をした心的影響だと思われる。

 声変わりもなく、高校二年になっても少女のようなあどけなさが残っているのはそのせいだろう。

 その純粋さとも取れる幼さが、さらに周りの警戒心を薄めていた。

 清志郎は隠すのがうまかった。

 故に誰も、清志郎のひずみに気がつかなかった。


 清志郎は少女たちの写真を出会い系サイトに目を伏せた状態でばら撒いた。

 すると面白いほど買いたいという男たちが殺到した。

 清志郎が決めた待ち合わせ場所で少女と買い手の男と落ち合わせ、ホテルに行くよう言いつけた。

 できないなら素顔を晒した裸体をネット上に公開し、家族にも知らせると言えば誰も逆らわなかった。

 金など不要だったが、清志郎は期待を込めてしばらくこの方法を続けた。

 悪いことをしているスリルを味わいたいのではない。

 いつか、自分を止めてくれる正義の味方が現れるのだと信じたかった。

 

 そんなある日、清志郎は“彼”に呼ばれた。

 突然、SNSを通じて連絡が来たのである。

 内容は、少女に売春をさせていることについて話がある、とのことだった。


 清志郎に恐怖はなかった。

 ようやく楽になれる、そう感じるほどどこかホッとし、穏やかな気持ちで指定された場所に向かった。

 もはや清志郎の中の怪物は、自分では制御できないほどに膨れ上がっていた。

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