第201話
「あー、よかったっすねえ! 志鬼兄貴のおかげで満腹っす!」
「全然よくないわ、あの件なかったら俺彼女か弟分に飯奢られるところやったやん、ダサすぎるやろ……」
結局お言葉に甘えたらふくご馳走になった三人だったが、店を出た後志鬼は肩を落としていた。
「ダサくないっすよ! 抜けてて可愛いっす!」
「お前にそんなこと言われたら虫唾走るわ」
「私も可愛いと思うわ」
「え、ほんまにぃ? あゆらは優しいなあ、好き好き」
「舎弟にも愛の手を!」
即座に立ち直った志鬼は人目も憚らずあゆらに擦り寄っていた。
そもそも志鬼の持ち金が少ないのは、以前あゆら用の服を買ったり捜査の時付き合いで酒を飲むせいである。
それをわかっているあゆらは、文句一つ言わない志鬼に申し訳ない気持ちは湧いても幻滅などするはずがなかった。
その後一同は近場の観光地や、いつものあゆらと志鬼のデートコースなどを巡ったりして、あっという間に日が落ちた。
「今日めっちゃ楽しかったっす、あざっした! 姉貴いつか絶対神戸来てくださいね、俺案内しますんで!」
「なんでお前やねん、俺がするわ」
「ふふ、ありがとう」
「ほいじゃあ、また!」
新幹線の切符を持った虎徹が、元気いっぱい手を振りながら駅に消えてゆく。
時刻は午後八時を指そうとしていた。
「なんだか、嵐みたいな子ね」
「うるさくてしゃあないわ」
「そんなこと言って、あの子も今朝話を聞いた騰さんって人も……志鬼にとっては大切な人なんでしょう?」
「……ぐああ、知らん知らん、痒くなる!」
大げさに背中を掻いて誤魔化す志鬼を、あゆらは微笑ましい気持ちで見ていた。
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