第199話
「おい、あんたら、何いちゃもんつけてるねん」
「……はあ? なんだこいつ」
「ラーメン食い逃げしようとかやることがせこすぎるやろ」
「なんだとこら、ドチビはすっこんでろ!」
「ああ!? チビ舐めんなよハゲ!」
「あ、あの、やめてください」
食いかかるように立ち上がった二人は虎徹より頭一つ分背が高く、大学生くらいかと思われた。
虎徹が参戦したことで騒ぎが大きくなってしまい、側に駆けつけたあゆらも店主と同様、どうしたらよいものか困り果てていた。
不意に、伸びて来た長い腕が猫の後ろ首を持つかのように虎徹のスカジャンの襟ぐりを掴み上げる。
軽々と宙に浮いた虎徹はそのまま後方に放り出された。
「まあまあ、兄さんら、そうカリカリせんと、他のお客さんもビックリしてるし」
ずい、と男たちの前に姿を見せたのは言うまでもなく志鬼だ。
両者の間に立ち、へらへらした様子で肩を叩く志鬼に、二人は下から睨みつける。
「なんだてめえ! やんのかこ」
男たちは肩に異常な圧を感じ、台詞とともに動きも止めた。
先ほどまで宥めるための軽いものだった力は、どんどん強くなり、両者の肩に食い込む。
――ど、どうなってんだこいつ、力強ええっ……!
そんなことを心中で叫んでいた男たちは、ついに志鬼の握力に耐えきれなくなり、膝を折って椅子に座らされてしまった。
「楽しく食事しようや……な?」
口調こそ穏やかで口角も上がっているが、目が据わっている。
男たちは得体の知れない恐怖に一気に青ざめると、やがて「もう二度と来るか!」と負け惜しみを言いながらテーブルに金を置いて店を出て行った。
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