第195話
「虎徹、くん? は、何歳なの? 学校は?」
「十五なんで志鬼兄貴の一個下っす、学校はないっすね、小学生ん時に給食目当てで行ってたくらいで」
「給食……?」
「あ、俺の親犯罪者なんすよ」
あゆらはギョッとした。まさに今、他人事と言えない文字が虎徹の口から放たれたからだ。
「しかも俺を虐待した罪で。アホすぎるっしょ? 暴力とかはなかったんすけど、
成長盛りの男児が一日給食だけでもつはずがなく、虎徹は常に食料を求め徘徊していた。
生きるか死ぬかの瀬戸際で、学業のことなど考えられるはずがない。
しかし虎徹が悲惨な生い立ちをあっけらかんと話すものだから、暗い空気が漂う余地がなかった。
「志鬼兄貴まだ中一で、相手高校生やったと思うんすけど、みんな一瞬で半殺しにして、俺のこと拾ってくれたんすよ」
「はしょりすぎやろ。ほんまは児童養護施設決まるまでうちで面倒見たるって話で連れて来たのに、組入る言い出したんやろうが」
「当たり前やないっすか、施設行くより志鬼兄貴の側におった方が絶対楽しいっすもん! あの時もらった鮭弁当の味は忘れません」
「ちょうど賞味期限切れてたから」
「俺の尊い記憶が残飯処理に!」
あゆらは二人を不思議な気持ちで眺めていた。
なんなんだろう。彼らは。
散々愛に飢えてきたはずなのに、どうしてこうも卑屈にならず素直でいられるのだろうか、と。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます