第186話
しかし、他の兄弟たちはそんな志鬼が気に食わなかった。
極道一の野間口の組長と言えば裏社会では最高級ブランドのようなものであり、その地位を喉から手が出るほど欲しがる者も多かった。
そんな生い立ちのせいか、生まれつきの性質か、志鬼はとても敏感な子供だった。
神経質というわけではなく、特に意識しなくても自分が周りからどんな風に思われているか悟るのがうまかった。
それ故に、小学生に上がった頃から違和感を覚え始める。
教師や生徒たちの自分を見る目が、何か違うようで気になった。どことなく敬遠するような、よい感じがしなかったのだ。
そして疑問を解決するには、あまりに現代は発展しすぎていた。
スマートフォンで「極道、野間口組」などと検索すれば、あっという間に情報が出てきた。
その内容にショックを受けつつも、やけに納得してしまう部分もあり、志鬼は自分の家が普通ではないことを理解した。
父親は怖い顔で後継の教育しかせず、母親はほとんど育児放棄しており気づけばいなくなっていた。後で騰に聞けば、組員と駆け落ちしようとしたところを殺されたらしい。もちろん事件になどなっていない。
騰は昔から歯に絹着せない話をする男だった。志鬼が尋ねれば嘘をつかなかったし、組長のお気に入りだからといって志鬼に取り入ろうともせず、本当の兄のように接してくれた。
騰は根っからの極道者ではあったが、そこに誇りを持っているため、一般人には絶対に手を出さないという信念を持っていた。
志鬼は父に反発したかったが、幼すぎたためどうすることもできず身体を動かすことでそのストレスを発散した。
皮肉にもそれが志鬼の格闘技術を向上させることとなる。
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