第181話

「ええ!? てことは俺、あゆらのこと泊まらせてもたやん!? 不良やん! 家大丈夫なん!? 親父はともかくお母さんとか」

「つべこべ言わずに熱を測りなさい、ほら!」

「は、はい」


 志鬼はあゆらに言われるがまま検温すると、結果は36.7度まで下がっていた。


「すごい回復力ね」

「俺子供体温やからそれでド平熱やで」

「あら、そうなの? どうりでいつも温かいわけね。しかし本当に風邪だったのかしら」

「全然どこも痛くないし、マジで知恵熱やったりして、恥ず!」

「恥ずかしくはないでしょう、それだけがんばってくれたということよ……ありがとうね、志鬼」


 そう言ってあゆらが額に軽く唇をつけるものだから、志鬼はまだ夢を見ているようだった。


 ――な、なんか距離が近い、また熱出そうや。


 志鬼が天にも昇る気持ちでいると、あゆらは立ち上がって玄関のすぐ横にある窓に向かった。


「そうそう、家のことなら大丈夫だから、連絡しておいたし、お母様は志鬼を悪く思っていないわ」

「そ、そう? ならええけど」

「換気するから窓を開けるわよ」


 そう言ってあゆらがキッチンの上についた小窓を開いた時だった。


「——キャアアアーッ!!」


 突然の悲鳴に飛び起きた志鬼が急いであゆらの元に駆け寄った。

 あゆらは青い顔で腰を抜かし、後退りしながら窓を指差している。


「どうしたあゆら!? Gが出たか!?」

「ち、違うわ! ち……」

「ち?」

「チンピラよ、チンピラの霊が……!」

「チンピラの霊って……」


 嫌な予感しかしない志鬼が小窓を見てみると、そこには茶色の短髪にピアスだらけの耳をした小僧がいた。

 

 ——ピシャッ!


 目が合った瞬間、志鬼は窓を閉めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る