第180話

 あゆらのパンツを見れるまたとない機会に、志鬼は病み上がりのせいか寝起きのせいか、いや、そんなのはただの言い訳か、とにかくそろそろとその禁断の布に手を伸ばそうとしたが。


「……志鬼?」

「——ぎゃあっ!? すみませんっ!!」


 お決まりなタイミングであゆらの声が聞こえ、志鬼は派手に尻もちをついた。

 最初のトラウマか、両思いだとわかっているにも関わらず未だにスカート捲り程度でビンタされると思っている志鬼だった。

 

「……なぁに、大きな声出して」

「いや、どさくさに紛れてパンツ見ようとしたから」

「……なんだ、別にそれくらい」

「へ?」


 まるでそれくらいかまわない、とでも言いたげなあゆらの返事に、志鬼は思わず間の抜けた声を漏らした。

 瞼を擦りながら身体を起こしたあゆらは、しばし目を丸めた志鬼と向かい合っていたが、寝ぼけてつい本音が出てしまったことに気がつくとみるみるうちに赤面した。


「ちょっと! 何言わせるのよバカ!!」

「イデッ! 今の俺が悪いん!?」


 あゆらは恥ずかしさのあまり側にあった洗面器で志鬼の頭を思いきり叩いた。


「それで、体調はどうなのよ?」

「めっちゃ身体軽いし、もう平気やと思う」

「そう? 丸一日近く寝ていたからよくなったのかしら」

「……え? 丸一日、って……」

「志鬼が寝出したのが昨日の午前十時頃で、今は朝の八時過ぎよ。今日は土曜日だし、学校が休みでよかったわね」


 それを聞いた志鬼はあからさまに焦りを見せた。

 ずいぶん寝たような気はしたが、まさかあゆらと一夜ともにしてしまったとは知らなかったからだ。

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