第166話
——つまり、自分のように価値が高い人間のストレス解消に、価値が低い人間が使われるのは当たり前だ、ということだろうか。
あゆらは脳内で要約された自己中心極まりない発言に、しばし言葉を失い、歯を食いしばっていた。
そして思ったのだ。
もはやこれは美鈴だけの問題ではない。
これから先、この男の犠牲者となる弱き者たちを救うためにも、絶対にここで止めなくてはならない、と。
「……名は
「僕の名前は清志郎、清い道を志すという意味で清志郎だ。何もおかしくはないよ」
「あなたってかわいそうだわ、悲しいことを悲しいと思えない、怖いことを怖いと思えない……どうかしている、そんなので生きていて楽しいの?」
「ひどい口ぶりだなあ、あの品性の欠片もない輩の影響かな」
「そうかもしれないわね、それだけ志鬼が好きだもの、どうしようもなく惹かれるの」
清志郎の左目が痙攣するような動きを見せる。
「どうしてわかってくれないの、こんなに僕はきみを思っているのに」
清志郎の声色が変わると同時に、あゆらを押さえる腕に力が込められる。
——本当に、このままメスを突き立てられるかもしれない。
呼吸が浅くなり、背筋に冷たい汗が流れる。
命の危機を感じたあゆらは、恐怖のあまり目を強く瞑った。
その時、勢いよく背後のドアが開かれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます