第147話
「あら、どうしたの帝くん、ご自慢の善者の仮面に
「あゆら」
僅かだが望み通りの反応を示した清志郎に、さらなる言葉を浴びせるあゆらだったが、背後からかかった声に肝が冷えた。
「お前はどれだけ私の顔に泥を塗れば気が済むんだ」
幸蔵の強烈な圧に負けじと、あゆらは手に汗を握り辿々しくも反論する。
「……お父様の評価を、下げるようなことはしていない、はずですわ、皆様、ご機嫌ではありませんか」
「ふん、くだらぬ茶番を。清志郎くんを少しは見習ったらどうだ。自分がどういう星の
「光栄です、幸蔵さん」
幸蔵はあゆらを横切り、清志郎の肩を抱き褒め称えた。
この時あゆらはひどい違和感に襲われた。
いつ、幸蔵と清志郎はここまで親しくなったのか?
そもそも親同士が決めた婚約ならばまだしも、子供である清志郎が直々に幸蔵に頼むなど、おかしな話ではないか。明らかに二人には個人的な繋がりがあるとしか思えなかった。
だとしたら、幸蔵も売春クラブになんらかの関係があるのか、清志郎の犯罪も、知った上で放任している可能性が高いと思った。
当初、父親だからと微かな期待を込めて、美鈴の件を相談しようとした自身の甘さを諌めた。
あゆらは直感したのだ。
もしや最大の敵は、清志郎ではなくこの父親ではないのか、と。
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