第131話

『……もしかして、俺みたいな奴と遊んでるのバレた?』

「えっ……?」

『やっぱりか……めっちゃ怒られたんちゃうん? ごめんな』


 寂しげに謝る志鬼に、あゆらの胸が締めつけられた。


「どうして志鬼が謝るのよっ、何も悪いことしていないんだから、謝らないで」

『いやあ、あれだけ人気ひとけある場所で会ってたらな、あゆらと一緒におるの楽しいからつい連れ回してもたけど、そこまで配慮できてなかったから』

「それは私が好きでしていることだもの、お願いだから、そんなことを言わないで」


 何一つ、嫌なことなどされていないのに、なぜ志鬼が悪者になってしまうのか、その不条理があゆらには辛かった。


「志鬼、私ね、今日のこと、とても楽しみにしていたのよ。だから、これに懲りずにまた誘ってほしいわ……あ、志鬼の迷惑でなければ、だけど」

『……迷惑なわけないやん、めっちゃ嬉しいんですけど』


 ドタキャンしてもあきれたり怒ったりする様子もない志鬼に、あゆらはとりあえず一安心した。

 しかし、電話の向こうにいる志鬼は、突然のパーティーに何か嫌な予感がした。


『あゆら、その、パーティーって……』

「パーティーがどうかした?」

『……や、なんでもないわ、また連絡するな』

「ええ、私も。本当に今日はごめんなさいね」

『ええって、あゆらが悪いんちゃうし……ほな』


 志鬼のその声を最後に、名残惜しくも通話が途切れた。


「あゆら様、おぐしはどのようにいたしましょう?」

「金髪で」

「——えっ!?」

「冗談よ」


 あゆらは艶やかな髪を掻き上げ、自嘲気味に笑った。

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