第125話
ふん、ふん、と鼻歌まじりにスキップをせんばかりの軽い足取り。
いつも大人っぽくしとやかと周りに言われてきたあゆらが、ここまで子供のようにはしゃぐのは初めてだった。
「楽しみのあまり早起きしてしまったわ、ほとんど眠れなかったし……」
遠足前夜の小学生並みに興奮して寝つきが悪かったあゆらは、口元に手を添え控えめにあくびをすると、ワンルームほどの広さを誇るウォークインクローゼットのドアを開け放した。
アパレルショップのように美しく整頓された洋服たちはハンガーにかけられズラリ並び、記念すべき今日という日に私を選んでと輝いている。
数えきれない上品で女性らしい衣類の中から、あゆらは目についたものを数点手にし、姿見の前で次々と合わせてゆく。
「これは少し派手すぎるかしら、遊園地だから動きやすくてあまり気取っていない方がいいわよね」
爽やかな寒色がいいか、女の子らしい暖色がいいか、スカートの丈は恥じらいを持って長めにするか、それとも思いきって短めにするか。髪は普段通り下ろして行くか、特別に結って行くか、だとしたら髪飾りはどれがいいか……。
買い物など何事も即決することが多いあゆらが、こればかりは相当悩み、時間をかけていた。
少しでも志鬼に可愛い、綺麗だと、思われたいが故の乙女心である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます