第94話
「……あゆらは優しいなあ」
「何よ、いきなり」
「ほんまは気になってるんやろ、俺が刺青した理由。でも聞かんようにしてくれてる。……気持ちのええ話やないから、また言える時が来たら、聞いてくれる?」
「……ええ、わかったわ」
少し甘えるような志鬼の口ぶりを受け止めるように配慮深く頷くと、あゆらは先ほどから刺青と同じくらい気になっていた箇所に視線を落とした。志鬼の腹筋である。
多数の窪みと膨らみで構成されたそれは、芸術品と言っても過言ではなかった。
「……すごいわね、とても鮭でできているとは思えないわ」
「鮭は身体にええからな」
「鍛えるとこんなことになるのね」
「割れた腹筋見るの初めて?」
「そ、そうね」
「やろうなあ、どう考えてもあゆらの周りにいる連中とは違うタイプやもんな」
まさにドキドキ、ソワソワ、といった擬音が当てはまるあゆらの
「触ってみる?」
「——ヒェッ!?」
「めっちゃ変な声出てるやん」
あはは! と腹を抱えて笑う志鬼に、あゆらは恥ずかしさを隠すために怒るしかなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます