第86話
「間違いなく他殺やと。帝鏡志郎……帝の父親に自殺として処理するように頼まれたそうや」
「なら、帝くんのお父様も」
「息子が人殺ししてるのわかってて揉み消したんやろな」
「…………腐ってる……ッ」
なんという現実。
一体誰を信じればいいのか。あゆらは大人全員が敵に思えた。
これで清志郎が美鈴を殺害したことは確実となった。しかし証拠がない。凶器もなければ保身に走る監察医が公の場で証言するはずもない。志鬼は念のため監視医との会話を録音していたが、清志郎が美鈴を殺したという明確な発言はなかった。万が一あったとしても、鏡志郎がそんなことは頼んでいない、とシラを切れば終わってしまう。
極道である親の後ろ盾を利用していない志鬼はただの高校生に過ぎず、そんな彼が監視医からここまでの情報を聞き出せただけでも十分な成果だった。
「どうして、帝くんはそんなこと……まったく意味がわからないわ」
「裕福なんやから金目当てではないやろうしな。となれば他に自分なりの理由があるか、もしくは特に意味もなくただなんとなく、か」
「なんとなく、って……」
「むしゃくしゃしただけで通り魔する奴がおるくらいやで。自己中な欲求満たすために強行に及ぶ輩は山ほどおるんや、あゆらが知らんだけでな……、けど、例えどんな理由があったとしても、帝がやったことは許されることやない」
不条理すぎる世の中で、いつも泣くのは力のない女、子供なのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます